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by 幸田 晋

ほんとの空へ・お~い福島:原発事故の教訓、どう発信?=吉田弘之 /福島

ほんとの空へ・お~い福島:
原発事故の教訓、
どう発信?=
吉田弘之 /福島

毎日新聞
10月1日(土)10時53分配信より


 東日本大震災と米同時多発テロ(01年)は、9月11日にそれぞれ半年、10年の節目を迎えた。ニューヨークの世界貿易センターに航空機が突っ込みビルが煙をあげて倒壊したシーンと、大津波、福島第1原発で水素爆発が起きた時の衝撃の映像がどこかで重なる。
 同時テロから6日後、メキシコ市特派員だった私はワシントンに入り米国防総省や国務省、米中央情報局(CIA)を連日取材した。同時テロの深遠は、旧ソ連のアフガン侵攻やパレスチナ問題など怒りと矛盾に満ちた歴史を抜きには語れない。だが「事件」そのものは未然に防ぐことが可能だったと思う。
 外国政府からテロの警告があり、一部の捜査機関は計画の断片を察知していた。だが情報は共有されず、米政府のイスラム過激派の脅威に対する認識も極めて甘かった。元CIA職員は「現場の危機感は上に伝わらず、さまざまな警告は生かされなかった」と語った。
 福島第1原発の事故も、防ぐ機会はあった。だが東京電力、国がよってたかって意図的に警告を葬り去ったという意味で、同時テロの失敗より罪深い。
 

ロバート・ゲラー東大大学院教授
らが最近、米誌に寄稿した論文によると、

福島を救ったであろう最後の機会は、
09年6月24日と7月13日、

経済産業省で行われた
「総合資源エネルギー調査会原子力安全・保安部会」だった。


本紙も震災後の3月27日朝刊で伝えている。




議事録にはこんなくだりがあった。

「津波に関しては、(貞観地震=869年で)非常にでかいものが来ているということはわかっていて、調査結果も出ている」(地震研究者)

「地震という観点からすると、被害はそれほど見当たらない」(東電)

「被害がないというのは、どういう根拠に基づいているんですか」(研究者)

最後は原子力安全・保安院の安全審議官が
「貞観の地震についても踏まえた検討をして本報告に出してくると考えています」
と議論を引き取り、何もしないまま3・11を迎える。



この時、東電、保安院が指摘を受け止め、
せめて非常用発電源装置を高いところに移すなどしていれば、
全電源喪失という事態は防げたかもしれない。



 米国は9・11の独立調査委が04年7月、約500ページに上る報告書を公表して対テロ戦略の構造的欠陥をあぶり出した。日本でも事故調査・検証委員会の調査が進む。年内に出される中間報告で、世界に向けてどんな教訓を発信するのだろうか。(毎週土曜日掲載)
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 ■人物略歴
 ◇よしだ・ひろゆき
 1956年須賀川市生まれ。二本松、郡山育ち。安積高校卒。80年毎日新聞社入社。宇都宮支局、東京社会部、ロサンゼルス、メキシコ市支局、ワシントン支局長、外信部長、東京本社編集局次長を経て4月から新聞研究本部長。

10月1日朝刊
by kuroki_kazuya | 2011-10-03 04:07 | 核 原子力