スキーにはまっています。


by 幸田 晋

原発の運転制限40年の怪  たんぽぽ舎・劣化ウラン研究会 山崎 久隆 

原発の運転制限40年の怪
   「何か厳しくなったのか?」
              
      
          たんぽぽ舎・劣化ウラン研究会 山崎 久隆


たんぽぽ舎です。【TMM:No1314】
                    転送歓迎
◆ 地震と原発事故情報 その299 ◆
      (1月17日)より一部転載(黒木)


 「何か厳しくなったのか?」

 原発の寿命を実質40年とするという細野原発大臣の発言に、読売、サンケ
イ以外の各紙はおおむね好意的だが、ちょっとまってと言いたい。信濃毎日新
聞の社説の主張「新規原発がゼロならば最終的にゼロになる」から「脱原発の
一歩とせよ」(1月8日付)は主張としてはまだ合理性があるが、原子力産業
が「新規原発ゼロ」を受け入れなければ実質的に意味は無い。



 さらに、40年間の運転をあらかじめ「保証」しかねない今回の「運転制
限」には、実際に大きな問題を引き起こす。もともと原発自身に耐用年数とい
う概念が存在しない。一般にあるのは機器類や構造物の税法上の耐用年数であ
って、機器類や容器類が何処まで使えるかという意味での耐用年数は、原発の
ように複雑な装置(念のために言えば「高度技術」でも「先端技術」でも無い
ことに注意)は、各装置の寿命がそれぞれ異なるので、全体を通しての耐用年
数は計算不能だ。


 一般に原子炉の耐用年数というと、交換不能な圧力容器がどれだけ持つかを
前提とし、それが使えなくなるまでを耐用年数と考えるのだが、

玄海一号機のように中性子を浴びてぼろぼろになり(中性子脆化という)

現時点でも使い物になりそうも無いものもある。

PWRは圧力容器が小形なので、特に中性子脆化が進みやすい。

ちなみに玄海1号機はまだ36年目だ。

これなど耐用年数切れだと思うのだが、

依然として九電は運転再開をもくろんでいる。



 さらに福島第一原発などの老朽原発の場合は、その間に何度も耐震基準が変
わってきたために構造からしてが、いわば「つぎはぎ状態」であり、全体の整
合性という面からも強度に問題が生じている。何でも強固に作れば良いという
ものではない。強度のある部分と無い部分の境目(例えば溶接部など)は、一
方の強度が上がったことが原因で以前より応力が集中して破断した、なんてこ
とさえ起こりえる。


 振動は「抑えるべきか発散させるべきか」なんていうのも単純では無い。む
しろ振動や膨張、収縮を逃がすように設計した方が良い場合もたくさんある。
しかし設計に失敗していたりすれば、思わぬ速度で劣化が進行し、材料強度か
らは考えられないほど早く破壊されてしまうかもしれない。



BWR型に特有の、

原子炉圧力容器の中にある

「シュラウド」という

ステンレス製容器も、

もともと「ひび割れ」など起きるとは思ってもいなかった。

交換すれば良いのだが、

配管などと異なり

圧力容器内に溶接で取り付けられていて、

交換など想定もしていないため、

大工事になるので「維持基準」なる

「ひび割れ容認運転」を強行してまで

運転を継続していた。

もっとも、一定の速度でひび割れが進展するため、

多くはその後交換工事を行ってはいるが。


しかしひび割れがある間は、

燃料の支持能力や

冷却材の流路保持能力に

問題があることは間違いない。



 
 こういう個別に起きる現象を「年数」で単純に割り出すことなど不可能で、
結局は一つ一つが壊れていくまでは本当の強さは分からないのが現実だ。従っ
て、それぞれの装置や配管などは、十分安全と見込まれる時期に、早々に交換
ないし補修をしてしまうことで、結果的に全体の安全を確保するという
のが「予防保全」の考え方だ。



 これに対して40年制限などを法定してしまうとどうなるか、容易に想像が
つくのが、コストの上昇だ。福島第一原発の教訓は、古い原発なのにメンテナ
ンスにお金をかけずに運転を強行していたことが、原発震災につながったこと
だが、今後40年以上動かせないとなれば、もっと早い時期、例えば30年を
過ぎたらもうメンテナンスにお金をかけなくなるだろう。かえって原発の安全
性は低下する恐れすらある。



結局は

「老朽原発は危険なのではないか」

という懸念に対して、

実に単純に回答をしてみたという程度に過ぎず、

本質的に

原発の安全性向上につながるとは到底言えない。

by kuroki_kazuya | 2012-01-18 05:51 | 核 原子力