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by 幸田 晋

21世紀にマルクスはよみがえるか - 池田信夫 エコノMIX異論正論

21世紀に
マルクスはよみがえるか


- 池田信夫
エコノMIX異論正論


ニューズウィーク日本版 5月7日(水)18時23分配信より一部

今アメリカで、
マルクスがブームになっている。


『21世紀の資本論』と題する
700ページ近い専門書が

アマゾン・ドットコムのベストセラー第1位になり、
フランス人の著者トマ・ピケティが

ワシントンにやって来ると、
ロック・スター並みの聴衆が集まった。


保守派は
「マルクスの本がベストセラーになるのは、アメリカの歴史はじまって以来の危機だ」と警戒し、

リベラル派の経済学者、ポール・クルーグマンは
「ピケティは不平等の統一場理論を発見した」と絶賛した。

それはこの本がマルクスと同じく、
世界で所得分配の不平等が拡大している事実を明らかにし、
その原因が資本主義にあると主張しているからだ。


1970年から2010年までに
アメリカの賃金の中央値(メディアン)はほとんど同じだが、

上位1%の人々の所得は
165%増え、

GDP(国内総生産)の20%を超えた。

このような格差の拡大は
一時的な問題だと思われ、
戦後ずっと多くの国で所得分配は平等化しているとされてきたが、

ピケティのチームは
過去300年の各国の税務資料を調査した結果、

戦後の一時期を除いて
格差は拡大してきたという事実を明らかにした。


次の図のように、不平等度(資本収益の所得に対する比率)は、

ヨーロッパでは20世紀の初めには今のアメリカと同じぐらい高かった。

それが1910年以降、下がったのは、

二度の世界大戦と大恐慌で資本が破壊されたためだ。

特に海外投資が植民地の独立によって失われたため、
戦後ヨーロッパの資本分配率は下がり、
アメリカより平等になった。
70年代までの平等化の時代は例外だったのだ。

出所:"Capital in the Twenty-First Century"


・・・(中略)


日本では、
別の形で資本過剰による不平等が拡大している。
2000年代に入って名目賃金が下がり続け、
非正社員の比率が労働者の4割に近づく一方、
企業は貯蓄超過になっている。

余剰資金は
資本家にも労働者にも還元されないで、
経営者の手元現金(利益剰余金)になっているのだ。


資金を借りて事業を行なうための企業が、
リスクを取らないで
貯蓄していることが
日本経済の萎縮する原因であり、
デフレはその結果にすぎない。


では、この格差を是正するにはどうすればいいのか。
フランス社会党員であるピケティは「グローバルな資本課税」を提言するが、これに賛成する人はほとんどいない。先進国が一致して増税することは政治的に不可能であり、望ましくもない。

しかし課税の中心を
所得から富に移し、
その課税ベースを広げるべきだ
という彼の主張は合理的である。


マルクスの『資本論』が
ドイツで1867年に自費出版されたとき、
1000部売れるのに5年かかり、
英訳されるのに20年かかった。


その本が20世紀の歴史を(よくも悪くも)変える絶大な影響力をもったことを考えると、
21世紀の『資本論』が全米ベストセラーになったことは、
大きな意味をもつかもしれない。
by kuroki_kazuya | 2014-05-08 06:53 | 経済危機