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by 幸田 晋

[原発からの避難] 県の推計時間で住民は安心できない

[原発からの避難]
県の推計時間で
住民は安心できない


南日本新聞 社説 2014年6/1 付 より一部

これで果たして原発からの避難時間の十分な推計をしたことになるのだろうか。

鹿児島県がようやく公表した
九州電力川内原発で
重大事故が起きた際、
住民の避難にかかる
時間のシミュレーションである。


まず、関係住民が最も知りたい市町別の避難時間がない。
身障者ら要援護者や海を隔てた離島の対応策もない。
放射性物質の拡散に影響し、
避難経路の変更につながる風向きも考慮していない。


シミュレーションでは、
原発から半径30キロ圏の9市町の
住民約21万5000人の9割が
車で圏外へ逃げ出すのに、
最短で9時間15分、最長では28時間45分かかるという。

最短時間は、
好天の昼間、すべての住民が4人ずつ自家用車に乗り込み、
道路の不通もなく、
警察などの適切な交通誘導を受けた場合などだ。

現実的とは思えない。
避難経路の混雑具合から
主に運転時間を試算した
結果の一つにすぎない。


住民の避難時間の目安は
国の原子力災害対策指針が示している。
放射線の空間線量率が高い地域は
避難指示から24時間以内、
それ以外は1週間以内とする。


県は指針を基に「おおむねこうした行動がとれる」と評価した。

だが、この結果だけで被ばくを避けられると安心するのは早計だろう。
シミュレーションの気象条件は悪天候時の車の速度低下しか考えず、
最も重要な風向きは無視しているからだ。



・・・(中略)


川内原発は再稼働第1号と目されている。
その条件となる原子力規制委員会の審査が最優先で進んでいる。

規制委は
新たな規制基準に適合するかどうか
審査するだけであり

実際の再稼働には地元の同意が欠かせない。

その同意は避難計画が有効であってこそだ。

中部電力浜岡原発を抱える
静岡県御前崎市の石原茂雄市長が、
「万全な避難方法が整う前に再稼働の議論はあり得ない」
と指摘するのはもっともである。


懸念はシミュレーションの結果だけではない。

シミュレーションで避けた
要援護者のいる福祉施設などの
避難計画もほとんど手つかずなのだ。


施設は30キロ圏内に240カ所あるが、
計画ができたのは5キロ圏の7カ所のみ。
10~30キロ圏の施設は策定のめどさえない。


また、甲状腺被ばくを防ぐ5キロ圏での安定ヨウ素剤の説明会や事前配布もこれからだ。

再稼働を急ぐ前に、
規制委の徹底した審査はもとより、
地元でもやり終えておかなければならないことは山ほどある。
by kuroki_kazuya | 2014-06-02 06:26 | 核 原子力