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by 幸田 晋

<東日本大震災4年>福島第1原発の現状 想定外続く廃炉作業

<東日本大震災4年>

福島第1原発の現状 
想定外続く廃炉作業


毎日新聞 2015年03月03日より一部

◇たまる「行き場なきごみ」

 東京電力福島第1原発事故からまもなく4年になる。焦点の汚染水問題は、いまだ抜本的な対策の実現には至っていない。政府・東電と原子力規制委員会の足並みは乱れ始め、情報公開で地元の信頼を損ねる事態も起きた。40年にわたる廃炉工程は緒についたばかりだ。1〜3号機では、高濃度に汚染された建屋の解体や溶け落ちた核燃料(燃料デブリ)取り出しなどが待ち受ける。ごみの処分という新たな問題にも直面する。より困難な廃炉作業に向け、政府、規制委、東電の真価が問われることになる。

 福島第1原発で問題になる廃棄物は、汚染水だけではない。放射性物質に汚染されたがれき、汚染水を処理した後に残る残渣(ざんさ)などの固体廃棄物が敷地内にたまり続けている。その大半が国内で処理や処分の経験がない「行き場なきごみ」だ。記者が2月24日に第1原発に入り、固体廃棄物の現状を見た。

 顔全体を覆う全面マスクにつなぎの白い防護服、三重の手袋と二重の靴下をつけて敷地内に入り、バスで敷地北側の5、6号機近くへ向かう。道路脇に山積みの丸太=が見えてきた。増え続ける汚染水をためるタンクを増設するため伐採した樹木だ。枝葉はチップ化して袋に入れているが幹は野積みのまま。敷地全体で約8万立方メートルもある。「樹木にも飛散した放射性物質が付いており、敷地の放射線量が上がる原因になっている」。同行した東電の白井功原子力・立地本部長代理が説明する。

 樹木や防護服は燃やして量を数十分の一に減らせる。東電は、野積みにした現場の近くに毎時600キロの廃棄物を燃やせる雑固体廃棄物焼却設備=を建設中だ。今年10月に運用を始める予定だったが、作業員の死亡事故で工程が一時中断し先送りになった。焼却灰には放射性物質が濃縮されるため、ドラム缶に詰めて貯蔵庫に入れる。白井氏は「放射性物質はフィルターで十分低い濃度に取り除くので飛散の心配はない。地元にはしっかり説明したい」と話す。

 ◇がれき1000ミリシーベルトも

 他の固体廃棄物は量を減らすこと自体が難しい。

 敷地の一番北側には、高さ約5メートルの盛り土が二つ並んでいた。水素爆発で破損した原子炉建屋や廃炉作業で生じたがれきを一時的に埋めて保管する「覆土式一時保管施設」=だ。遮水シートの上に1メートルの土をかぶせて放射線を遮蔽(しゃへい)する。一つの盛り土の下には約4000立方メートル、25メートルプールにして5杯分ほどのがれきが埋まっている。さらに二つ増やす計画で、そのための穴を掘る工事が行われていた。

 東電は、がれきが出す放射線量に応じて保管方法を変えている。覆土式で保管するのは毎時1〜30ミリシーベルトのがれき。これより低いものは野積みにするかシートをかぶせ、高いものは貯蔵庫の地下に置いている。構内には1000ミリシーベルトを超す極めて放射線量が高いがれきもある。作業員の被ばくを防ぐため隔離するのだ。

 廃炉作業の進捗(しんちょく)に伴い、がれきの量は増え続けている。2012年2月に約3万立方メートルだったが、昨年末時点で約13万立方メートルと4倍以上になった。東電は将来的にすべて貯蔵庫に入れる予定だが、増築が追いついていない。

 「放射線量が低い金属やコンクリートなどは、構内で再利用して量を減らす」と白井氏。しかし今後は、炉心溶融した1〜3号機の原子炉建屋内部にあるがれき撤去や、建屋自体の解体が始まる。内部は非常に濃度の高い放射性物質で汚染されており、より線量の高いがれきが増える見込みだ。


・・・(大幅に中略)


 ◆建屋内の燃料取り出し

 ◇除染が進まず難航

 東電は昨年12月、4号機の使用済み核燃料プールからの燃料取り出しを計画通りに完了した。4号機は元々、原子炉内には燃料はなく、これで放射性物質の新たな拡散などの危険が大幅に低減された。しかし、炉心溶融を起こした1〜3号機は建屋内の除染がはかどらず、プール内の使用済み燃料の取り出しや、溶け落ちた燃料デブリ(破片)の回収に向けた調査などは全体的に遅れ気味だ。

 プール周辺のがれき撤去が最も進んでいる3号機は、作業フロアが高線量で、クレーンなどの設置や点検のため作業員が近づけるレベルになっていない。東電は床や壁の除染を続けているが、来年度上半期に開始する予定の燃料取り出しは遅れる見込みだ。

 1号機は、がれき撤去やクレーン設置などに時間がかかるため、プールの燃料取り出し開始は、当初予定から2年遅れの2019年度以降に見直された。燃料デブリ取り出しは、5年遅れの25年度からとなる。2号機も放射線量が極めて高く、建屋内の除染作業が困難な状態だ。このため、東電は燃料の取り出し方法を再検討しており、16年度中に決める。

 原子炉建屋内部の調査も進んでいない。政府や東電は、原子炉格納容器内を水で満たした上で燃料デブリを取り出す方法を検討しているが、水で満たすには、格納容器の損傷場所を特定し、修復しなければならない。このため、建屋内にロボットを投入して水の漏えい場所を特定する試みが続いているが、これまでに損傷場所が特定できたのは、1号機で1カ所、3号機で1カ所にとどまる。

 東電は新たに2月から、1号機の炉心に燃料がどのくらい残っているかを確かめるため、宇宙線を利用してエックス線写真のように原子炉建屋を透視する試みを始めた。

 廃炉作業への関与を高めるため、政府は昨年「原子力損害賠償・廃炉等支援機構(NDF)」を発足。NDFは政府・東電が廃炉工程表を変更する際にリスク低減の参考とする「戦略プラン」の中間報告を3月中にまとめる。鈴木一弘廃炉総括グループ長は「燃料デブリの取り出しは桁違いに難しく、人類にとっての挑戦だ」と話す。
by kuroki_kazuya | 2015-03-05 06:48 | 核 原子力