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by 幸田 晋

「フクシマ・カタストロフの5年」第1回 終わりなき3.11

「フクシマ・カタストロフの5年」
第1回 終わりなき3.11

小児甲状線がん多発の不毛論争
岡山大大学院教授が警告「フクシマは国内平均の20〜50倍」


たんぽぽ舎です。【TMM:No2723】
2016年3月5日(土)午後 08:44
地震と原発事故情報より一部

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┗■2.「フクシマ・カタストロフの5年」第1回 終わりなき3.11
 |  小児甲状線がん多発の不毛論争
 |  岡山大大学院教授が警告「フクシマは国内平均の20〜50倍」
 └──── 「サンデー毎日」2016.3.6 より抜粋

◎ 2011年3月11日に起きた福島第一原発事故から間もなく5年。大量の放射能が放出され、その爪痕は今なお消えない。『フクシマカタストロフ 原発汚染と除染の真実』の著者が綴る本連載は、福島で多発している小児甲状腺がんの核心リポートから始めたい。

◎ 167人。これは、この5年間に福島県で見つかった「疑い」も含めた小児甲状腺がんの数だ。
 福島県では、5年前に発生した東日本大震災に伴う、東京電力福島第1原子力発電所の事故直後から、「県民健康調査」の一環として、発生当時18歳以下だった子どもたちの甲状腺の検査を実施してきた。
 これは、1986年4月に旧ソ連のチェルノブイリ原子力発電所で起きた原子炉爆発事故のあと、大気中に拡散した放射性ヨウ素による小児の甲状腺がんが多発したことによる。この事実を踏まえ、子どもたちの健康を長期に見守ることを目的としている。

◎ そこで福島県では、福島県立医科大学と県内外の医療機関が連携し、まず「先行調査」から始めた。
 いきなり、子どもたちの甲状腺に異常が起きているのかどうか判断しようにも、基本となるデータがなかったことから、とりあえず事故当時18歳以下だった子どもたちの甲状腺の状態を全て調査してみることからはじめたのだ。
 最初は福島第1原発周辺の市町村からはじめ、順次県内を網羅していった。
 その結果、2013年度(14年3月末)までに、この先行調査が終了している。
 ところが、この時点で、甲状腺に異常が見つかり、「悪性ないし悪性の疑い」のがんと診断された子どもたちが、116人いたのだ。このうち、切除手術を受けたのは101人。さらにこのうち、良性結節と診断されたのはわずかに1人で、あとの100人が甲状腺がんであることが確認された。

◎ その後、福島県では、14年度(14年4月)から、「本格調査」を開始している。つまり、先行調査から異常が増えているか比較するための2巡目の検査だ。
 2月15日、第22回福島県「県民健康調査」検討委員会が開かれ、ここで甲状腺検査の実施状況について報告された。
 その結果、2巡目検査の途中であるが15年12月末までに「悪性ないし悪性の疑い」のがんとされた子どもが、新たに51人見つかっていたのだ。
 従って、原発事故発生から5年が経(た)とうとしている福島県では「疑い」も含めて、冒頭の167人が小児甲状腺がんと診断されたことになる。
 そこで議論は、原因は原発事故にあるのか否かに、いきたいところだが、その前にまず確認しておくべきことがある。

◎ この167人という小児甲状腺がんの患者数は、普通に見つかるものなのだろうか。それとも、多いのか、少ないのか。
「日本では思春期を越えた子どもの甲状腺がんをまれに見るぐらいです。その頻度は、年間100万人に1人といわれています。これは欧米、日本、ほぼ変わりません」
 これは、長崎大学理事兼副学長の山下俊一氏が、震災の起こる前の08年9月に長崎で開催された「第22回日本臨床内科医学会」の特別講演で語ったものだ(注1)。彼はチェルノブイリ事故による汚染地域で医療活動に従事したことでも知られ、震災から間もない11年3月19日には、福島県放射線健康リスク管理アドバイザーに、同年7月15日からは県立医科大学の副学長に就任している。(中略)

 症例の92%に「転移」「浸潤」

◎ 15年3月31日までに、外科手術を施行した104例中97人が県立医大甲状腺内分泌外科で実施されたことを明かし、そのうち1例は術後良性結節だったが、残りの96例について検討した結果、「術後病理診断では、(中略)リンパ節転移、甲状腺外浸潤、遠隔転移のないものは8例(8%)であった」としている。つまり、症例の92%はがんの「転移」と「浸潤」があった、というのだ。もうこの時点で、治療が必要であることは間違いがなく、過剰診断は否定される。
 やはり、福島県では手術が必要な甲状腺がんが、異常な頻度で発症している。もはやアウトブレイク(異常多発)と呼んでも過言ではない。(中略)

 「チェルノブイリは対処遅れた」

◎「もうこの小児甲状腺がんの多発は、放射線被曝が原因以外に考えられない」
 岡山大学大学院の津田敏秀教授(疫学、環境医学)は、疫学の見地から福島県の小児甲状腺がんの増加を分析して、そう断言している。(中略)
 「まして、甲状腺がんの原因は放射線であることは、医学の教科書にも出ていますから」(中略)
  いずれにせよ、福島県で見つかった小児甲状腺がんの数は、どう考えても尋常ではない。この原因が原発事故によるものであろうとなかろうと、はやり他都県での調査も必要だろう。チェルノブイリでは、小児甲状腺がんが見つかったときには、すでに転移が起こり、救われない命も少なくなかった。
 福島にはじまる現状を放置しておく不作為こそ危険だ。この期に及んで、いつまでも不毛な論争を繰り返している余地はない。
     (作家・ジャーナリスト/青沼陽一郎)
by kuroki_kazuya | 2016-03-06 06:15 | 核 原子力