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by 幸田 晋

どんどん増えるグローバル移民2億2450万人 大移動に背向ける日本

どんどん増えるグローバル移民2億2450万人 大移動に背向ける日本

木村正人 在英国際ジャーナリスト 2016年5月10日 19時11分配信より転載

http://bylines.news.yahoo.co.jp/kimuramasato/20160510-00057541/

ブラジル人口上回る国際移民

国連の潘基文事務総長は9日、難民・移民問題の報告書をまとめました。グローバル化に伴って、豊かさと安全を求めて移動する移民、難民は昨年の時点で約2億4400万人にのぼり、2000年比で41%も増えました。

インドネシア(人口約2億5千万人)やブラジル(約2億500万人)に匹敵する規模です。「安全と尊厳/難民と移民の大移動について」と題した潘氏の報告書をみてみましょう。

(1)難民1950万人

難民の数については、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR) の報告書を引用して14年は1440万人と指摘しています。これにパレスチナ難民510万人が加わります。

わずか11カ国から75%の難民が発生し、難民の50%以上を7カ国で引き受けています。難民の半分は18歳未満の子供です。また女性や少女の数も半分に達しています。

UNHCRによると、14年の時点で難民の86%は途上国で暮らしています。自発的に本国に帰る機会はこの数十年の間で最低レベルになっています。紛争や迫害を逃れ、家を追われた人の数は6千万人を超え、その半分が子供です。

(筆者注=昨年以降、欧州に大量の難民が押し寄せ、大変な騒ぎになっていますが、欧米諸国など先進国が難民を途上国に押し付けている実態が浮き彫りになっています。UNHCRのグローバル・トレンズ・レポートによると、14年末時点で難民・避難民は5950万人。内訳は難民1950万人、国内避難民3820万人、難民申請者180万人)

(2)国際移民2億2450万人

「国際移民」とは、一時的、または短期間、自分の生まれた国とは違う国で暮らす人、他国での居住が長期間に及ぶ人のことです。自分の命を守るためにやむを得ず母国を離れ、他の国に逃げざるを得ない難民(日本の認定NPO法人、難民支援協会の定義)と移民は明確に区別されています。

昨年、国際移民と難民の数は00年より7100万人(41%)増えて2億4400万人に達しました。世界人口に占める国際移民の割合は00年の2.8%から昨年3.3%まで上昇しました。(筆者注=難民1950万人を除くと、グローバル移民は4億2450万人という計算になります)

国際移民の大多数は、いわゆる「出稼ぎ労働者」で1億5千万人。生産年齢(15歳以上)の難民2億660万人の72.7%を占めています。国際移民の約半分は女性で、3分の1が15~34歳の若者です。

グローバル化の進展で、より豊かな暮らしと自由を求めて他国へ移動する「グローバル移民」が急激に増えています。

(3)50年には国際移民3億2100万人

2050年までに世界人口は97億人に達すると予測されています。その時、グローバル移民の人口は3億2100万人に膨らんでいる可能性があります。人口増の半分はアフリカからもたらされます。

出生率が下がり、比較的、老人も少ない途上国では質の高い教育を施し、増える労働者に対して雇用機会を作り出すことができれば、大きな果実を手にできます。しかし教育や雇用機会を拡充するペースを人口増が上回れば、大量の移民を国外に送り出すことになります。

しかし、と同時に、持続可能な移民政策を持たない国では急激な高齢化と人口減少、労働力の縮小に見舞われるでしょう。(筆者注=日本やイタリアの現状を見れば、一目瞭然です)

(4)気候変動の影響

気候変動などによる自然災害が人の移動に与える影響は今後、もっと大きくなるでしょう。過去8年にわたって毎年2800万人もの人が避難を強いられています。

(5)幼い犠牲者

紛争や弾圧、迫害を逃れる際、多くの人が命を落としています。過去20年間で国境を越えるため、5万人が亡くなったという推定があります。このうち子供は数千人とみられています。(筆者注=ミッシング・マイグランツ・プロジェクトによると、地中海を渡ろうとして命を落とした難民は14年3280人、昨年3772人、今年に入ってすでに1357人にのぼっています)

潘氏が挙げる3つの柱は次の通りです。

(1)大移動する難民と移民の安全と尊厳を確保する。

(2)難民に対する責任を国際社会が共有する。

(3)安全で規制され、秩序だった移民政策に国際社会が取り組む。

国連は23、24日、トルコのイスタンブールで人道問題に特化した「世界人道サミット」を開いて、移民や難民の現状と国際社会による支援のあり方について議論する予定です。

「この2~3年で得た教訓は、個々の国ではこうした問題を解決できないということです。難民と移民の大移動に関する国際協力と行動を強めていかなければなりません」(潘氏)

日本の在留認定率は2.7%

法務省によると、日本の難民認定申請者数は昨年、7586人で前年比2586人増の過去最多を記録しました。うち3898人(前年比729人増)が処理され、難民認定者数は27人で前年に比べ16人増加しました。人道上の配慮から在留を認めた者は79人でした。計106人がわが国での在留が認められました。

処理件数に対する在留認定の割合はわずか2.7%です。欧州連合(EU)の平均は59%で、最も低いポーランドの13%に比べても日本の2.7%は低すぎます。

日本の外国人労働力は0.3%

経済協力開発機構(OECD)「国際移民アウトルック2010」をみると、外国人労働力の割合も0.3%と他の欧米諸国に比べて格段に低く、日本がグローバル化から取り残されていることが分かります。



安倍晋三首相の経済政策アベノミクスのうち、成長戦略には外国人労働力を増やすための政策も含まれています。

・高度人材の認定要件を緩和

・現行の技能実習制度を見直し、職種や受け入れ枠を拡大、実習期間を延長

・製造業の海外子会社の外国人従業員を受け入れる

・介護分野での国家資格を有する外国人の就労を可能に

・国家戦略特区での外国人の起業を促進、家事支援人材を受け入れ

・外国人IT人材を3万人から6万人に倍増(20年まで)

・中長期的な外国人材受け入れを検討

日本には外国人や移民への拒否反応が強く、難民の受け入れも進まず、外国人労働力も増えていません。このまま、ずっと日本は「グローバル移民の大移動」時代に背を向け続けるつもりでしょうか。

(おわり)


木村正人 在英国際ジャーナリスト

在ロンドン国際ジャーナリスト(元産経新聞ロンドン支局長)。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。masakimu50@gmail.com
by kuroki_kazuya | 2016-05-12 05:55 | 学ぶ