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by 幸田 晋

「新規制基準」は世界最低水準?!

「新規制基準」は世界最低水準?!
木村雅英(再稼働阻止全国ネットワーク)

たんぽぽ舎です。【TMM:No2835】
2016年7月19日(火)午後 08:34
地震と原発事故情報より一部

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┗■2.「新規制基準」は世界最低水準?!
 |  もっかい事故調が「日本の原子力安全を評価する」と1.7点(その2)
 |  原子力規制委員会は原発再稼働推進委員会!その103
 └──── 木村雅英(再稼働阻止全国ネットワーク)

  伊方3号機も再稼働を目前にしてトラブルが起こった。一次冷却水のポンプ故障で再稼動は8月にずれ込む。川内でも高浜でも伊方でも、再稼働の直前または直後にトラブルが発生している。川内・高浜は30年、伊方3号機は20年も前に稼働開始した古い原発だから当然かも知れないが、原子力規制委員会の「新規制基準」と審査の甘さが露呈しているとも言えよう。
 さて、岩波「科学6月号」の大論文特別企画「日本の原子力安全を評価する」(「もっかい事故調」田中三彦さんほか)の紹介を続ける。
 科目別評価法を採用し、内部起因事象ー外部起因事象、防御の階層として立地—設計—検査—設計事故—過酷事故—防災に分け、テロと安全文化についても評価している。
 (1)立地基準
 そもそも原子力発電所は事故を起こし得る施設であるという考えを出発点とし、克服することが実質的に困難か著しくコスト高である場所と、事故が起きてしまった場合の影響が大きすぎて設置によって期待される利益を帳消しにする場所は、候補地から排除するべきとの常識を原理としている。
 日本では、1964年に策定され1989年に原子力安全委員会によって改訂された原子炉立地審査指針は3ページの軽薄なもので、20年以上放置され続けた。
・地震による影響の受けやすさについては、日本は圧倒的に世界一であることは前回紹介した。
・活断層については、米国NRCでは、「長さ300m以上の地表断層が8km以内にあるような敷地は原子力発電所としては適さない」と明記され、第四期地質年代(260万年前から現在)に生じた変動を警戒し、調査範囲は320kmもしくはそれ以上。だが、日本の基準は、活断層は12万年—13万年以降のものでよく、敷地内にあっても原子炉建屋の真下を通っていなければよしとしており、すべてにおいて甘い。
・津波の発生メカニズムとして海底地滑りを重要視していない。
・建屋の基礎レベルと地下水流も甘く、絶えずポンプで汲み上げながらでなければ運転できない(福島第一原発)は不適。柏崎刈羽原発の場合、原子炉建屋の最地階(地下5階)は海面下32.5mという深さ。
・火山についてはIAEAの安全指針があり、溶岩流が100kmにも及ぶ可能性、火砕流が秒速50m以上で150km先に到達する、と書かれている。
 直径20kmの姶良(あいら)カルデラ内にあって頻繁に噴煙を上げる桜島の火口から、わずか40kmほどしか離れていない川内原発は言うに及ばず、本来は設置禁止区域内にある原発が他にもあるのではないか。
  私見であるが、立地基準を見直して厳格に適用すれば、日本の総ての原発は不合格ではないか。


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┗■3.巨大地震でダムは凶器と化す
 |  老朽化したダムの耐震性を再点検する必要
 |  「警戒せよ!生死を分ける地震の基礎知識」コラムその159
 └──── 島村英紀(地震学者)

  さる4月に起きた熊本地震で、山中にある水力発電所・黒川第1発電所(熊本県南阿蘇村)の貯水施設が壊れ、大量の水がふもとの集落に流出した。
 このため、集落では、少なくとも民家9戸が壊れ、2人が亡くなった。水は4月16日のマグニチュード(M)7.3の地震直後に流出し、推計で約1万トンにもなった。

 この問題で5月24日、
発電所を運転する九州電力の熊本支社土木部門の技術部長ら幹部2人が、
地元の新所(しんしょ)地区の区長の避難先を訪ねて謝罪した。
同社が住民に謝罪するのは初めてだった。


  しかし九電は斜面が崩落して新所地区の2人が死亡したことと水の流出との因果関係は「調査中」としている。
 大量の水を湛えているダムが地震で崩壊したら、この熊本黒川第1発電所に限らず、大きな被害を引き起こすことがある。

 2011年の東日本大震災のときの福島県須賀川(すかがわ)市にある藤沼ダムの例がある。震災と原発事故の報道の陰に隠れてしまったが、地震直後にダムが決壊して大量の水が下流を襲った。
 濁流が家屋をのみ込んで7人が死亡、1歳の男児1人が行方不明になった。また家屋19棟が全壊・流失し、床上・床下浸水した家屋は55棟にのぼった。水だけではなく流木による破壊も激しかった。

  このダムは太平洋から内陸に約75キロ入ったところにある。ダムの高さは18メートル、幅は133メートルだったが、地震とともにダムが全幅にわたって決壊してしまったのだ。

  当時、ダムは田植えの時期をひかえてほとんど満水だった。このため約150万トンもの水が、多くの樹木を巻き込んだ鉄砲水となって下流の集落を襲った。ダムの下流約500メートルのところにある滝地区でも高さ2メートルを超える泥水の痕跡が残った。

  しかも地震後約1時間後に襲ってきた東日本大震災の津波と違って、ダムの決壊による鉄砲水は、地震後すぐに襲ってくるものだから恐ろしい。

 ダムにも「設計基準」というものがある。1957年に制定され、以後、改訂が続いている。
  だが藤沼ダムは最初の制定前、1949年に完成した古いダムだった。灌漑(かんがい)に使う農業用水のためのもので、土を台形状に固めた「アースフィルダム」である。
 日本には農業用に作られた古いダムも多い。たとえば1854年に起きた巨大地震、安政南海地震でいまの香川県にあった満濃池(まんのういけ)が決壊した。これも高さ15メートルを超す大きなダムだった。安政南海地震は、恐れられている南海トラフ地震の先祖のひとつだ。

  水力発電所にも設計基準がある。通商産業省(現経済産業省)は、1965年に水力発電所の耐震性を定めた技術基準を作った。だが1914年から稼働している黒川第一発電所の貯水槽は、それ以前に作られていたために、適用外とされていた。

  老朽化したダムの耐震性を
再点検する必要があろう。
地震のときのダムは凶器になるのだ。


    (島村英紀さんのHP「 http://shima3.fc2web.com/ 」
   「島村英紀が書いた『夕刊フジ』のコラム」より7月15日の記事)
by kuroki_kazuya | 2016-07-20 06:15 | 核 原子力