スキーにはまっています。


by 幸田 晋

金正恩氏の行動は、元経済ヤクザの眼から見れば驚くほど合理的だった

金正恩氏の行動は、
元経済ヤクザの眼から見れば

驚くほど合理的だった


現代ビジネス 9/26(火) 9:00配信より一部

https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20170926-00052970-gendaibiz-bus_all

 「完全破壊」――19日の国連演説で北朝鮮について、アメリカのトランプ大統領はこう言及した。核実験、ミサイル発射実験、そして制裁決議の全会一致の採択と、9月はまさに北朝鮮のための月だった。追い詰められたかに見えるが、金正恩氏はこの騒動の中でいくつもの「新たなカード」を入手したことにお気づきだろうか。

騒動を起こした張本人が
利益を拾うその手法は、
私のような元経済ヤクザからみれば、
マフィアのビジネスそのものである

実は、犯罪組織の経済学的視点から金正恩氏の一連の行動を振り返ると、言動の一つ一つが「感情的」なものではなく、非常に合理的であることが分かるのだ。

「挑発」でも「反発」でもない

 12日に開かれた国連安保理での制裁決議で、アメリカは戦略物資である石油の全面禁輸を提案。禁輸は見送られたものの、初めて石油の輸入制限が制裁対象になったことが話題となったが、今回はまず、この一手の評価から始めたい。

1919年に開戦した第一次世界大戦は
毒ガスや飛行機といった新たなウェポンシステムが登場したことに注目が集まりがちだが、実際は石炭から石油へのエネルギー転換の戦いであった。イギリス海軍は1912年に軍艦の燃料を石炭から石油に切り替えたが、この決断をした人物こそ、かのウィンストン・チャーチルだ。イギリスは大戦において圧勝を収め、20世紀は石炭に勝利した「石油の世紀」となった。

 その後、第二次大戦末期には核が実用化されたが、核は石油と比べればあまりにも専門性が高いエネルギー源だった。原発や潜水艦、空母など、利用方法はかなり限定的で、兵器として使用すれば同等の反撃を受けるリスクがあるため、核による防衛安全保障は「保持」に限定されているのが現実だ。

 つまり、核は「エネルギーの転換」までは果たせなかった。良くも悪くも21世紀にいたっても「石油の世紀」は続いている。戦争においてもしかり、だ。この局面で北朝鮮に対して「石油の禁輸」を持ち出したアメリカは、やはり石油と戦争の関係を良く理解しているといえるだろう。

さて、その制裁決議から2日後の14日、
北朝鮮は中距離弾道ミサイル「火星12」を発射する

制裁に対する「反発」「挑発」という枕詞付きで報じられたのだが、「挑発」も「反発」も感情的な行為であり、私はこの見方には同調しない。

 金正恩氏の母は、父・金正日氏から「あゆみ」と呼ばれて寵愛を受けた大阪出身の在日朝鮮人である。正恩氏本人も寿司が好物で、日本文化に囲まれて育った。12歳でスイスに留学し、4年間をヨーロッパで過ごす。朝鮮語のほかに英語・中国語・ドイツ語・フランス語を話すとされる。

 経歴だけ見れば「革命の血族の末裔」というよりは、エリート・ビジネスマンのそれだ。裏のルートで麻薬や武器など黒い商品を扱い、北朝鮮主導部の懐を潤すことがすべての行動原理だから、主導者というより「ビジネス・マフィア」と呼ぶべきだろう。

 経済ヤクザとは、ソロのマネタイズの職人だ。大手企業が稟議書の手間に縛られている間に、手段に躊躇することなく行動し、決算までしてしまうことでアドバンテージを得る。私自身、組織の持つ暴力性と経済を合理的に利用し、極めてプラグマティックにヤクザ人生を歩んできた。

 あるのはドライな感情と決断、行動のみ。
その国家版である北朝鮮のトップが
ミサイル実験や核実験を繰り返すのは、
決して「反発」や「挑発」といった感情によるものではない。
むしろその逆で、
何かを得るために行っているとみることの方が正しい。
「緊迫の9月」を通じて
金正恩氏は実に多くのモノを得た
というのが私の考えだ


ロシアン・マフィアと北朝鮮と

 金正恩氏は何を得たのか。

 一つは国連演説で、トランプ大統領から「米国の同盟国を守る必要に迫られた場合、北朝鮮を完全に破壊する」という言葉を引き出した点だ。完全破壊まで行うとすれば、その軍事行動にはロジスティックス(兵站)の整備が不可欠となり、一般的にその準備に3カ月はかかるといわれている。つまり、2発のミサイルを発射したことで最短でも12月までの「猶予期間」を作り出すことに成功した、ということだ。

 さらに「石油」の問題でも北朝鮮は多くを得たと私は見ている。

 アメリカやイギリス、オランダから石油という生命線を止められたことで、物資確保のために第二次大戦に突入したのが日本である。当時の日本といまの北朝鮮を重ね合わせ、「全面禁輸は北の暴発を招きかねない」という判断が働いたのか、北朝鮮は(制限されたとはいえ)「禁輸」させずに石油を得る道を残すことに成功した。

 これは、金正恩氏が核開発とミサイル実験によって、かつての日本のような「暴発の恐怖」を掻き立てた成果と言えるだろう。

 さて、今回、石油の禁輸反対に働きかけたのがロシアのプーチン大統領だといわれているが、
実は、
プーチン氏を
北朝鮮危機の「フィクサー」から「プレイヤー」にしたことこそが、
金正恩氏が得た最大の「成果」だと私は考えている


 プーチン氏の手足となって動く組織に、「ロシアン・マフィア」がある。私は彼らと接点があった。

 ドバイ最大の銀行、エミレーツNBD。石油のビジネスをしていた当時、私も証券を作るためにこの銀行を利用していた。同銀行に口座を作った個人個人に「オフィサー」という銀行担当員が付くのだが、私のオフィサーは、何人かのロシアン・マフィアも担当していた。

 私が作る証券は250億円くらいで「こんな大きな証券作るもんは、他にはおらんやろ」と自信満々でいたのだが、ある時そのオフィサーに、ロシアン・マフィアの作っている証券の金額を尋ねると「今回は小さくて、5000億円です」というから驚愕した。バンクドラフト(送金小切手)も1兆円という額面。常識の範疇を越していた。

あまり知られていないが、
06年ごろ、
そのロシアン・マフィアが販売する核物質が
世界中で高額で取引されていたことがあった

私もその市場に参入しようと彼らに接触した。結局、参入障壁が高くて核物質の取り扱いは諦めたのだが、その時に彼らが教えてくれたことがある。

 日本では中国がアフリカへ多額の開発投資を行っていることが報じられているが、コンゴやガーナに対して中国以上に資本投下をしているのが、ロシアン・マフィアだということだ。

 ロシアン・マフィアは紛争地の敵味方両方に武器を供給する。そして紛争が終わるとそこから武器を回収し、リサイクルして次の紛争地へと運ぶのだ。AK-47は頑強なアサルトライフルだが、プリンター商売と同じで、カートリッジと弾丸はほとんどロシアン・マフィアによって作られ供給されている。
人の命や政治信条よりビジネス。
これが国際社会でのマフィアの発想である


表に見えないところで
強い影響力を世界に行使しているロシアンマフィア。
当然、この北朝鮮危機においても暗躍している


・・・(後略)
by kuroki_kazuya | 2017-09-28 06:35 | 学ぶ