古賀茂明「『米朝有事で最大30万人が死亡』を追及した東京新聞の望月記者を黙殺した菅官房長官」
2017年 11月 14日
「『米朝有事で最大30万人が死亡』を
追及した東京新聞の
望月記者を黙殺した菅官房長官」
〈dot.〉
AERA dot. 11/13(月) 7:00配信より一部
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20171112-00000018-sasahi-pol
トランプ大統領訪日のお祭り騒ぎが終わった。しかし、一番肝心なことについて、私たち国民は何も情報を与えられなかった。
「一番肝心なこと」とは、「北朝鮮が言うことを聞かなかったら、米国先制攻撃するのかしないのか」ということだ。さらに、先制攻撃をした場合、「日本にどんな被害があり得るのか」についても何も知らされなかった。
会見ではこれらについてほとんど質問もなく、結局、今に至ってもスルーされたままだ。
北朝鮮との戦争になるケースは大きく分けて3つある。
1つは、どちらが先かわからないが、偶発的な衝突が生じてそれが本格紛争につながるケース。
2つ目が、北朝鮮が日米韓いずれかを攻撃して戦争が始まるケース。
3つ目が、日米韓いずれかが北朝鮮に先制攻撃するケースだ。
最初の2つは、こちらの明確な意図に関わらず戦争が始まるので、その時期を予測することはできないが、最後のケースは、こちらが決断することだから、予測可能だ。
その明確な予兆としては、韓国にいる日本人や米国人に日米政府が国外退去勧告を行うことが挙げられる。まだそこまでは行っていないので、現時点でいきなり、日米韓が先制攻撃することはないということだろう。
一方、報道では、韓国からの日本人の退避計画のシミュレーションが行われていると言われているので、そうであれば、意外と先制攻撃は近いのかもしれない。在韓米軍の家族にクリスマス休暇で米国に帰国するよう促す動きがあるというような情報が流れているのも気になるところだ。
■気になる小野寺防衛相発言
日経新聞などの報道によると、富士山会合(国際関係や安全保障について日米の政府関係者や有識者が話し合う国際会議)で10月28日、小野寺五典防衛相は北朝鮮の核・ミサイル開発問題について次のように発言している。
『残された時間は長くない。今年の暮れから来年にかけて、北朝鮮の方針が変わらなければ緊張感を持って対応せねばならない時期になる』
『軍事的な衝突になった場合の備えを日米韓3カ国で議論する必要がある』
『トランプ氏の外交努力が成功裏にならなければ、私たちは緊張感をさらに増す』
『トランプ氏はすべての選択肢がテーブルの上にあると発言した』
つまり、トランプ大統領の今回のアジア歴訪での外交努力の成果が挙がればよいけれども、それがうまく行かず(その可能性は高い)、北朝鮮の核・ミサイル開発が止まらなければ、軍事的衝突になる可能性がいよいよ高まっているということのようだ。
そして、その時期は、早ければ年末から年明けにも訪れるかもしれないと言っているようにも取れる。つまり、今後数カ月で戦争の危機が一気に現実化する可能性があるということである。
■軍事侵攻は空爆や斬首作戦だけでなく地上侵攻も
11月4日付の米紙ワシントン・ポストは以下のように報じた。
『米国防総省幹部が
米議員に宛てた書簡の内容として、
北朝鮮が保有する全ての核兵器の
保管場所を特定してそれらを掌握する、
最も確実かつ唯一の方法は
米軍による地上侵攻だと伝えた』
『米国防総省の統合参謀部副部長のものとされる書簡は
一方で、北朝鮮に地上侵攻した場合、
同国に生物化学兵器を使用させることになる
だろうと警告している』
ここで注目すべきなのは、北朝鮮を攻撃する場合、空爆や斬首作戦などではなく、地上侵攻をしなければ、北朝鮮の核兵器を全て把握することはできないと国防総省が考えているということだ。仮に本格的地上戦になれば、戦闘期間も長期化し、米韓軍(日本が参戦すれば自衛隊も)に大変な被害が生じることを覚悟しなければならない。もちろん、民間人の被害も同様だ。
仮に朝鮮半島で本格的な戦争になった場合の被害想定については、10月27日に発表された米議会調査局(Congressional Research Service)の報告書が、次のように述べている。
「たとえ北朝鮮が通常兵器しか
使わなかったとしても……
戦争開始から数日で、
3万人から30万人が死亡すると推計される。」
また、ジョンズ・ホプキンス大学高等国際問題研究大学院の北朝鮮監視プロジェクト「38ノース」のレポートによれば、北朝鮮が東京とソウルを核攻撃した場合、その攻撃の規模にもよるが、犠牲者の数は40~200万人、攻撃が最大の効果を発揮した場合、その数は、130~380万人に増える可能性があると分析している。(NEWSWEEK 日本版10月6日より)
もちろん、こうした分析よりはるかに精緻な分析が米国国防総省などによって実施されていることは確実だ。日本政府も、そうした情報をもとに独自の試算を行っているだろう。
そこでは、「100万人だから大変だ、それを1万人に抑えるにはどうしたらよいか」などというとんでもない議論が行われている可能性がある。
上記の米議会調査局報告書でも、「金正恩政権が米国本土を狙える核兵器を取得することを可能にするリスクは、朝鮮半島地域の紛争に伴うリスクよりも大きい」という主張が紹介されている。アメリカがやられるくらいなら、東京やソウルの犠牲なんてたいしたことではないという意味だから、日本人にとっては、ふざけるなという話だ。
しかし、感情的に怒るだけではだめだ。実は、この考え方は本質的なことを我々に教えてくれる。それは、この戦争は、北朝鮮とアメリカの戦争なのであって、韓国と北朝鮮、ましてや、日本と北朝鮮の戦争ではないということだ。
繰り返し言おう。日本を守るためなのではなく、アメリカを守るための戦争。それ以外の何物でもないのだ。
■望月記者の追及にも口を割らない菅官房長官
以上述べた通り、アメリカの安全を守るために、北朝鮮を先制攻撃する事態が近づいている。そして、そのような事態になった場合のシミュレーションが行われていて、甚大な被害が予測されている。
しかし、米国よりはるかに大きな被害を受ける日本では全くと言ってよいほど、この問題について表立った議論がなされていない。マスコミも連日北朝鮮問題を報じているのに、この問題だけは徹底的に避けている。
そんな状況で、唯一この問題を真剣に追及しているのが、東京新聞の望月衣塑子記者だ。望月氏は、11月6日の菅義偉官房長官会見でかなり突っ込んだやり取りを展開した。
・・・(後略)