スキーにはまっています。


by 幸田 晋

柏崎刈羽原発の規制基準適合性審査について 本当は論じられなければならない問題の欠如 (上)

柏崎刈羽原発の規制基準適合性審査について
本当は論じられなければならない問題の欠如 (上)

     山崎久隆(たんぽぽ舎)

たんぽぽ舎です。【TMM:No3252】
2017年12月20日(水)午後 09:31
地震と原発事故情報
より一部

┏┓ 
┗■1.柏崎刈羽原発の規制基準適合性審査について
 |  本当は論じられなければならない問題の欠如 (上)
|  東電は巨額の費用を国民につけ回し6800億円も
 | 柏崎刈羽原発につぎ込んでいる
 └──── 山崎久隆(たんぽぽ舎)

1.経理的基礎の欠如、 2.技術的能力の欠如、
※以下は(下)に掲載
3.耐震重要度分類の問題点
4.外部火災に対する設計方針とテロ対策の矛盾、
5.津波による損傷の防止は成立していない

 柏崎刈羽原発の規制基準適合性審査において、重要な要素のいくつかが全くと
いっていいほど論じられていない。
 これは審査以前の問題であり、再稼働どころか、電力会社として存在しつづけ
ることに疑問が湧く問題がいくつもある。
 今回はそのうちの重要なものを取り上げる。

1.経理的基礎の欠如

 原子炉等規制法第43条の6に規定する原発の設置許可には、原発を建設する事
業者の経理的基礎と技術的能力の存在が求められる。
 このうち経理的基礎については、原発の保守管理や緊急時対策などに多額の費
用が掛かることから、「お金がなくて出来ませんでした」などと言われても困る
わけで、重要な要素の一つである。

 実際に、東電は福島第一、第二原発の津波対策について、少なくても2008年に
は敷地が冠水する規模のものがあり得ることを認識し、その対策について10m盤
上に10mの防潮堤を作る工事計画も策定していた。
 しかし、2002年から続く東電不祥事で原発全基停止などを経て巨額の赤字を計
上してきたことなどで資金繰りに難があり、計画を先送りしているうち、2011年
3月11日を迎えてしまった。
 経理的基礎が欠落していた東電が引き起こした原発震災だからこそ、厳しく審
査すべきではないのか、原子力規制委員会の姿勢が問われている。

 一方、東海第二原発の規制基準適合性審査では日本原子力発電について「ほと
んどの電力会社は経理的基礎がしっかりしているが、原電はほかの事業者と大き
く異なる」(更田委員長)として審査が事実上止まっている。
 地震や津波に加え過酷事故対策等、災害対策に約1700億円かかる見通しだが、
この費用を支出できる裏付けがないというのだ。そのため原電の株主であり、電
力を買い取る契約を結んでいる東電や関電などの電力会社から債務保証を受ける
ことが、合格の条件であるとした。

 原電に経理的基礎がないことは、そのとおりだ。では東電はどうなのか。
 柏崎刈羽原発の規制基準適合性審査の審査書(事実上の合格書)では一切触れ
なかった経理的基盤。
 損害賠償や廃炉に22兆円もの費用が掛かり、原子力損害の賠償に関する法律に
も民法上の法理にも反して、他電力や新電力から資金を供出させる仕組みを強引
に導入し、さらに税金を投入してまで東電の責任を軽減させた上で「経理的基礎」
があるとしている。
 言い換えるならば、将来にわたる賠償費用や廃炉費用についても国と他の企業
からの資金投入で賄い、東電の利益は温存すると言うことだ。
 そこまで手厚くする理由は唯一、被災者のため、賠償が出来なくなったら大変
なことになるとして作られた制度だった。

 ところが換骨奪胎、見る間に被災者支援は弱者から打ち切られ、特に避難指示
区域外から避難した人々に対しては、元々東電は賠償をしていなかった上に、一
部では地方団体が訴訟を起こしてまで費用負担要求または追い出しを始めている。
 本来東電が負担すべき避難に要する費用を自治体が負担させられてきた結果が
これである。
 東電は巨額の費用を国民につけ回し、自らは6800億円もの費用を柏崎刈羽原発
につぎ込んでいる。この資金があればどれほど被災者への補償が進むことか。

2.発電用原子炉の設置及び運転のための技術的能力

 「技術的能力」についても大きな問題がある。
 東京電力は他電力と異なり福島第一原発事故を引き起こした会社である。
 事故の原因究明と再発防止については他の電力会社とは異なる要求がされるべ
きだ。それは、事故の原因究明において、東電の技術的能力、特に福島第一原発
の設備を運営する能力並びに過酷事故対策で準備された各種対応が正常に出来た
かどうかが明確に調査されなければならない。

 事故については、政府の事故調査と国会の事故調査が行われたが、いずれにお
いても明確に事故原因と収束作業活動の妥当性は判断されていない。せっかく収
集した700人以上もの証言をほとんど活用しなかった政府事故調査委員会と東電の
非協力的な態度により調査妨害を受けた国会事故調査委員会の報告書については、
事故の原因究明はなされていない。結局、過酷事故対策の「技術的な能力」は、
現在も大きな問題が残されているのである。

 また、経験について「技術的能力指針は、設計及び工事並びに運転及び保守に
必要な経験として、本申請と同等又は類似の施設の経験を有していること又は経
験を蓄積する方針を示すことを要求している。」としている。

 これも福島第一原発事故を引き起こした問題点が解明されていない以上、経験
を有しているとは言えない。
 従って、技術的能力があるとする判断は誤りであるから、許可をすべきではな
いのだ。
 なお、更田委員長は東電について、福島第一原発事故の経験があるから他電力
よりも経験値が高いという趣旨の発言をしている。

 しかし、現場を経験した電力社員や下請け従業員はどんどん退職ないし異動し
ている。経験を蓄積しようという仕組みは見られない。当然ながら、将来的には
全員いなくなる人の経験の多寡は経験値の評価対象にはならない。
 東京電力が原発事故を自己の経験として蓄積しようとするならば、事故の原因
究明にもっと早くから熱心に取り組んでいるであろう。現実にはそのような姿勢
は見られないのだ。  (下に続く)
    (初出:月刊「たんぽぽニュース」2017.11月号)


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┗■2.『民をだまし大地と海を汚した東京電力と政府の責任を問う』
 |  東電は長期評価の津波予測について2008年3月には福島第一原発に
 | 波高15.7mの津波が来襲するという結論に至っていた
 | 12/13「井戸川裁判」(福島被ばく訴訟)第9回口頭弁論の報告
 └──── 冨塚元夫(たんぽぽ舎ボランティア)

 12月13日午前10時開廷の103号法廷には続々傍聴者が入廷し、満員で入れない人
が10人以上出たそうです。この日法廷では第13準備書面の要旨が原告弁護団から
読み上げられました。

 裁判後の報告会では、この準備書面について古川元晴弁護士から詳しい説明が
ありました。
 さらに原告井戸川克隆さんから「福島原発行政の今昔」というプレゼンがあり、
科学ジャーナリストの添田孝史さんから「国が隠した福島沖の大津波」というプ
レゼンがありました。
 井戸川さんのプレゼンは、福島第一原発事故前の彼の日記・記録を元に、国
(保安院等)、福島県が事故後の対策のマニュアルがあったのに無視して、すべ
きことをしなかった罪を明らかにしています。
 添田さんのプレゼンは、津波予想についての「東電のうそ」を国も県も知って
いたので同罪であること、検察も知っていながら起訴しなかったことを明らかに
しています。

 第13準備書面の要旨は下記のとおりです。
1.被告らは各自に課せられている責務を遵守して、2006年に改定された耐震設
計審査指針(新指針)に照らした耐震安全性確認を実施すべきだった。
 (1) 被告らの根幹的な責務
 ア.東電は、原発事業者の高度注意義務、特に高度の予見義務を遵守すること。
 イ.被告国は原発事業者が遵守すべき安全基準を定め、規制権限を行使するこ
と。
 ウ.被告国は原発事業者に対し、主導的、積極的な役割を果たすこと。
 (2) 最新の知見に即応した安全性の確認が実施されていない場合は、「設置許
可をしてはならない」ので、まず原子炉を止めて万全の措置をとるべきだった。

2.被告らの、新指針に基づくバックチェックの致命的な不備と不作為は違法で
ある。

3.被告らの反論は失当である。特に被告国の第8準備書面による「切迫」性、
「優先順位」性は、論理的に成り立たない。

4.被告の最後の「優先順位」の主張は「津波対策は地震対策に比べ早急に対応
すべきリスクとしての優先度がない」という主張ですが、驚くべき理屈です。
 あたかも地震対策に時間と費用をかけたので、津波対策があと回しになり、時
間的に間に合わなかったかのように述べていますが、実際は耐震補強工事をほと
んど行っていなかった。
 被告東電は、最終報告予定を2016年1月としており、保安院も東電のバックチ
ェック実施および対策工事の遅れを黙認していた。

5.被告らは津波についてのバックチェック実施を完全に先送りしていた。
 しかし被告らは、福島第一原発に重大な影響を及ぼす津波として、2つの「津
波予測」が存在していることを認識していた。
 1つは、バックチェック指示前の2002年に推進本部が公表した「長期評価」の
津波予想で、もう1つは、バックチェック指示後に知見の進展が見られた貞観津
波についての予測です。
 長期評価の津波予測について東電は、2008年3月には福島第一原発に波高15.
7mの津波が来襲するという結論に至っていた。
 貞観津波の予測については、安全性確認が不可避ではないかと、保安院内部で
検討されたが、プルサーマル推進を優先させようとする人たちが、まともな意見
を抑えつけたことが知られている。

6.ほかの裁判では取り上げられていない重要なことがあり、それは東北電力が
女川原発についてバックチェックを実施していたということです。
 そのことは、原子力安全基盤機構(JNES)が2010年に文書で報告しており、
津波対策の必要性、緊急性は当時一般に認識されていなかったという被告の主張
を完全に否定するものです。
 しかも、実は女川よりも福島第一のほうが津波対策の必要性、緊急性が高かっ
たと認識されていたのです。

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by kuroki_kazuya | 2017-12-21 06:15 | 核 原子力