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by 幸田 晋

格差問題が再浮上 労働者デモ頻発 上海

これでも、中国を社会主義と「抗弁」するのか??

上海で格差問題が再浮上し労働者デモ頻発している
  
1%の特権階級に40%の富が偏在

 中国で工場の賃上げを求める労働者のストが頻発している
「収入格差」をめぐる問題が改めて浮上している。

13億人の人口を背景に豊富で安価な労働力を輸出パワーに結びつけた
「世界の工場」だが、その経済成長の実績と労働者の「豊かさの実感」の
差があまりにも大きく、しかも特権階級への「富の偏在」が
一段と顕著になってきたからだ。

 誰もが貧しさを共有していた時代はとうに過ぎ去った。
中国誌、財経国家週刊によると、国有企業幹部と
平均的な労働者の収入格差は128倍に達した。

なかでも電力、電信、石油、保険など独占業種の国有企業をみると、
従業員数が中国全土の労働者数の8%なのに対し、収入は総額の55%を占める。

 中国共産党や政府、国有企業の幹部ら特権階級に属する1%の富裕世帯に、
全土の富の実に40・4%が集中するとの調査もある


 北京大学の夏業良教授によれば、所得格差を示すジニ係数
(0に近いほど平等で1に近いほど不平等)は昨年、中国で0・47となった。

改革開放が始まった1979年は0・28だった。
市場経済化と経済成長の結果、格差による社会のゆがみも肥大したことになる。

賃金不満75・2%

 国は富めども民が貧する状況はいまも拡大している。
年率10%前後の急速な経済成長を続けた結果、
国内総生産(GDP)に占める労働報酬の総額は
83年の56・5%をピークに
2005年には36・7%まで20ポイントも下降した。

 実際、農村部からの出稼ぎ労働者の場合、
上海など先進的な都市でも収入が残業代なども含めて
ようやく1500元(約2万円)を超えた程度。
夫婦共働きで3千元の収入があったとしても、
郊外に広さ50平方メートル程度の100万元(約1350万円)の
中古マンションを購入するためには、
2人の収入のすべてを28年近くもつぎ込まねばならない計算だ。

 小型車を10万元(約135万円)で買うのも同じ計算で3年近くかかる。
マイホームもマイカーも、労働者にとっては一生かなわぬ夢なのが現実といえる。

 こうした中、労働組合の全国組織で共産党とも密接な関係にある中華全国総工会は、
労働者の75・2%までが賃金の分配に不満をもっているとの調査結果を明らかにした。
この2年間に起きた労働争議の65%は収入分配や待遇改善に関する不満が発端であり、
社会安定を揺るがす要因になってきたと指摘している。
賃上げを要求するデモの連鎖に加え、
小学校や幼稚園など弱者を狙った無差別殺傷事件なども
格差社会への強い不満が背景とされる。

戸籍差別が根源

 今年3月の全国人民代表大会(全人代=国会)閉幕後の記者会見で、
温家宝首相が「社会には不公平な現象が数多くある」と指摘した上で、
「社会安定の基礎となる公平の実現へ、私は残る3年の任期で最大の努力を払う」
と異例の決意表明をする場面があった。

 だが「不公平の解消」を追求するはずの政策は、
実際には歪曲(わいきよく)された方向に向かいつつあるようにみえる。

 温首相の強い意向を受けた形で政府内部では、
「同一労働、同一賃金」との原則を明文化して
労働者への収入分配を適正化する目的の「賃金法」を年内にも成立させるという。
雇用者側が業界ごとの動向や賃金相場に基づいて、
賃金制度の共通化や労働者の権利保護を定める条項が盛り込まれる見通しだ。

 しかし、市場経済の社会においては、賃金や待遇は業界や業種一律ではなく、
勤務先企業の業績や従業員個人の実績などに対応するのが常識だ。

 むしろ根源的な格差の問題は、沿岸部と内陸部の決定的な経済発展度合いの差や、
都市部と農村部の住民を「戸籍」で差別する制度にありそうだ。

都市部の特権階級が、2億人の農村部からの出稼ぎ労働者を
事実上の「被搾取階級」とみなして、低賃金労働を強いている構図も明らか。

戸籍の差別が中国国内に農村部約8億人の“植民地”を仮想的に作ったともいえる。

 社会主義市場経済が看板の中国共産党政権。
温首相が残された3年足らずの任期中に、いかに「格差問題」を解決するのか。
国際社会が注目している。
by kuroki_kazuya | 2010-06-18 04:11 | 労働