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by 幸田 晋

原子炉実験所ってどんな所?

原子炉実験所ってどんな所?

「物理学・化学・生物学というような非常に基礎的な学問研究をしている所で、
原子力の研究をしてるという人はほとんどいないという、そんな状態です」


〜第92回小出裕章ジャーナル 
2014年10月11日より転載


石丸次郎:
今日は小出さんご自身がどういう職場で、どんなお仕事をされているのかというのをちょっと紹介させて頂きたいと思うんですね。まず、小出さんがいらっしゃる京都大学原子炉実験所、これが京都ではなく、実は大阪の熊取町にあるんですね。我々、関西在住の人間は大体どのあたりかなということが分かります。関西空港のそば、大阪府のだいぶ南の方にあるんですけれども、なぜ京都大学の施設がそもそも京都でなくて、大阪にあるんでしょうか?

小出さん:
私の職場には、名前どおり原子炉実験所ということで原子炉があります。原子炉は人が住んでいる所には造ることができないということで、京都の町には造ることができませんでした。どこに建てようかということで、候補の敷地をあちこち探したのですけれども、結局どこも人が住んでいるからダメと断られ続けまして、ようやく今ある大阪府泉南郡熊取町という、もうすぐ和歌山という所に敷地を確保して、そこに建てたということです。

石丸:
小出さんは今、資料を見させて頂きますと、原子炉実験所に74年から勤務をされているということですが、この熊取の施設はいつ頃できたんですか?

小出さん:
63年に原子炉実験所という組織が京都大学の中にできました。そして、64年から原子炉自身が動き出したという歴史です。

石丸:
なるほど。この熊取の実験所は、どれぐらいの規模の施設なんですか?敷地、あるいは働いている人達の人数?

小出さん:
敷地は10万坪あります。

石丸:
10万坪って相当広大ですね。

小出さん:
はい。原子炉があるために、それだけ広大な敷地を取らなければいけないわけですけれども、最近はもう大阪のベッドタウンに飲み込まれてしまいまして、周辺全部、住宅街になっているのですが、原子炉実験所の敷地の中だけは、緑がたくさん残っていまして、夜になると動物のサンクチュアリになっています。

石丸:
なるほど。そこで働いてる職員・研究者の人達はどれぐらいの数になるんですか?

小出さん:
全所員で200名、教育研究に携わってる人間が約80名です。

石丸:
そこで運用されている原子炉、この規模と言いますか、大きさというはどれぐらいのものですか?

小出さん:
はい。まず、原子炉と言うと、皆さん原子力発電ということをイメージされると思うのですが、全く関係ありません。発電をするためにはタービンとか発電機が必要なわけですが、私の所の原子炉はただただ研究のために使うという原子炉で、原子力発電所等に比べれば、原子炉の大きさが3千分の1というようなオモチャのような原子炉です。

石丸:
なるほど。皆さんがひとつの研究をやられてるわけじゃなくて、いろんな多様な研究をされていると思うんですけれども、主にはどういうことをこの原子炉実験所でやってるんでしょうか?

小出さん:
もうさまざまです。大学ですので、基礎的な学問研究をするというのが役割でして、80名の研究者の中にも物理学をやってる人もいますし、化学をやってる人、生物学・医学をやってる人、農学をやってる人と、いろいろな方々がそれぞれの研究をやっています。共通しているのは中性子という素粒子を使いたい。そのためには原子炉が必要だということで原子炉実験所を造ったわけで、大抵の方々はそれぞれの学問分野の中で、中性子を使いながら研究を続けています。

石丸:
やっぱりその中で、当然その原子力を専門とされている研究者も当然そこで働いておられると思うんですけれども。

小出さん:
原子炉実験所と言うと、皆さん何かその原子力発電、ウランの核分裂をエネルギーに使うことを中心にしてるという風に考えられるようなのですが、実は全くそうではなくて、物理学・化学・生物学というような非常に基礎的な学問研究をしている所で、原子力の研究をしてるという人はほとんどいないという、そんな状態です。

石丸:
ほとんどいないんですか?

小出さん:
はい。

石丸:
小出さんは、この原子炉実験所の中では少数派と言ってもいいんでしょうか?

小出さん:
そうですね。私は原子力に興味がありましたし、「原子力を進めることでどんな悪影響が出てきてしまうのか」ということを私の研究テーマにしています。ですから、原子力発電所という機械のどこに問題があって、どこに危険が潜んでいる、どこに事故になる可能性があるのかというようなことをずっと調べながら来ましたし、「事故時、あるいは平常運転時にどんな環境汚染が起きるのか」ということも私の研究テーマにしてきました。

そのために、様々な放射線測定ということをやらなければいけませんでしたので、そのための機器の開発・プログラムの作成というようなことも私の仕事でした。そして、もうひとつ私自身は、放射能のゴミのお守りをするということを仕事にしています。

石丸:
ゴミのお守りですか?

小出さん:
はい。

石丸:
ゴミの管理ということですか?

小出さん:
そういうことです。

石丸:
当然その原子炉実験所でも核のゴミが出ますよね?

小出さん:
もちろんです。

石丸:
それはどういう風に現状、処理をしてるんですか?

小出さん:
通常、その原子力発電所等の核のゴミの一番重要なものは、使用済みの燃料そのものなのです。うちの原子炉の場合には、先程も聞いて頂いたように、燃料が93%濃縮ウランということで、原爆材料そのものだったわけです。それを原子炉の燃料にして使ったわけですが、もうこれ以上この原子炉の中では燃えないという状態になってもなお、核分裂性のウランが70%ぐらい燃料の中に含まれているのです。

そうなりますと、米国としては、そんなものを日本に置いとくことはダメだということで、「使い切った燃料は必ず返せ」という、そういう契約でした。ですから、実験所としても、その大変重荷になる使用済み燃料というものを持っていなくても済むようになりまして、燃やしたものは米国に返してしまうということでやってきたのです。

大変、実験所としたはありがたいことだったと思います。それ以外に原子炉が動くと、さまざまなゴミが出てきます。気体のゴミ・液体のゴミ・固体のゴミ、そういう物が周辺にもちろん出ていくようなことになると、周辺の人々を被ばくさせてしまうわけですから、できる限りそれを捕まえて敷地の外に出さないという、そういう仕事を私はしています。

石丸:
なるほど。もっと、どんなお仕事をされているか聞きたいところなんですけど、またの機会にさせて頂きたいと思います。今日は小出さんに、京都大学原子炉実験所はどんな所なのかと、どういうお仕事をされているのかということについてお話を聞きました。小出さん、どうもありがとうございました。

小出さん:
いえ、ありがとうございました。
by kuroki_kazuya | 2014-10-12 06:43 | 核 原子力 | Comments(0)