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by 幸田 晋

関西電力「2度目の値上げ申請」のウラの「無神経放漫経営」

関西電力「2度目の値上げ申請」の
ウラの「無神経放漫経営」


新潮社 フォーサイト 2月3日(火)18時41分配信より一部

ヒトと同じように企業にも“遺伝子”がある。
合理的に説明がつかない経営判断でも、
その企業の歴史に照らし合わせれば納得できることが往々にしてある。

例えば、関西電力。
東京電力福島第1原子力発電所の事故をきっかけに
激変した電力市場に対処する術もなく、
4期連続で巨額の赤字計上を続ける
森詳介会長(74)、八木誠社長(65)の首脳コンビは、
この2年間で2度目の値上げを
政府に申請した直後、共に留任を決めた。

森は今年5月に任期切れを迎える関西経済連合会(関経連)会長の続投も宣言。

値上げ申請に際して債務超過転落の危機を叫ぶ一方で、
トップの財界活動は継続し、
元会長ら顧問7人に
少額とは言い難い報酬を払い続けている


過去のしがらみを払拭できず、抜本的なリストラに踏み切れない同社にとって
何より求められるのは経営陣の刷新なのだが、
歴代首脳が退き際の悪さを何度も露呈してきたこの会社に
自浄作用を期待するのは確かに無理だろう。

■4年で赤字が7000億円以上

「高浜原発3、4号機の再稼働時期は見通せない。
このままなら2016年3月期まで5期連続の赤字となり、債務超過の恐れもある」

昨年12月17日、臨時の記者会見を開いて
昨年5月 に続く電気料金の引き上げを政府に申請する意向を明らかにした社長の八木は、
鬼気迫る表情でその理由をこう語った。

経済界の常識では、
経営トップが自ら「債務超過の恐れ」を口にするのは余程追いつめられている場合にしかあり得ない。
周知のように、2011年3月11日の福島原発事故以降、
国内の原発は定期点検入りを機に順次運転停止を余儀なくされ、
発電量に占める原発の割合が44%と高水準だった関電は、
代替の火力発電の炊き増しによって収益が極度に悪化した。
2012年3月期~14年3月期の3年間で最終赤字(連結)は計5831億円に達していたが、
これに15年3月期の赤字予想1260億円を加えると、
3.11以後の4年間で
7000億円を超える赤字を出すことになる


当然のことながら、こうした赤字の垂れ流しは財務を毀損する。
11年3月期に1兆4949億円あった関電の純資産(単体)は、14年3月期には8067億円に急減。
しかも、このうち5000億円は繰り延べ税金資産である。

八木が指摘するまでもなく、
5期連続の赤字になれば監査法人から全額取り崩しを迫られるのは必至。
そもそも繰り延べ税金資産とは、
将来収める予定の納税額から算出した“還付される見込みのカネ”だから、
赤字で課税所得がなければ計上されない資産なのだ。

そうなると、前期末の実質的な純資産は3000億円強であり、
関電単体の自己資本比率は5%弱ということになる。

昨年夏、北海道電力と九州電力は
債務超過懸念が顕在化したとして、
日本政策投資銀行から
それぞれ500億円、1000億円の優先株による出資を受けたが、
前期末の単体自己資本比率は北電が5.4%、九電が8.1%だった。

東京電力が事実上破綻して国有化された後、
電力業界の「長男坊」となった関電だが、
台所事情はかくも惨憺たる状況なのだ。

■役員報酬は平均2100万円!

ところが、
地域独占にあぐらをかいて「超過利潤」を満喫してきた経営陣は、
さっぱりアタマの切り替えができない。

前述した臨時記者会見から1週間後の昨年12月24日、
政府に今年4月1日からの再値上げ
(家庭向け平均10.23%、企業向け平均13.93%)を正式に申請した後に
記者会見した社長の八木は、
「効率化でコスト増を吸収できず、断腸の思いだ」と陳謝したが、
同社の経費削減の実態が明らかになるにつれ、
あまりにお粗末な取り組みに
地元の消費者や中小企業経営者などの間から怒りの声が上がっている。

まず、役員報酬。
前回(2013年)の値上げ(家庭向け9.75%、企業向け17.26%)の際、
経済産業省総合資源エネルギー調査会電気料金審査専門小委員会
(委員長=安念潤司・中央大学法科大学院教授)の査定で、
役員報酬は2013~15年度を通じて平均1800万円
(国家公務員指定職の俸給相当)までしか原価算入を認めないとされていたのだが、
関電役員の平均報酬は
昨年12月まで2100万円だった

再値上げを申請する段になり、
「役員報酬の削減幅をこれまでの平均60%から5%上積みする」としてようやく1800万円に下げた
というのが真相。

今年1月21日に開かれた同専門小委のヒアリングで、
さすがに複数の委員から
「2013年度以降の報酬削減が不十分だったことをどう釈明するのか」との追及を受け、
八木は「経営全般のコスト削減で補いたい」と申し開きをした。

関電関係者によると、
八木が言及した「経営全般のコスト削減」とは、
来期(2016年3月期)以降に実施予定の
社員への住宅手当(年3回支給)停止や、年間賞与の見送り。
すでに労組に打診しており、
これにより社員1人当たりの平均年収を655万円から630万円程度に引き下げるという。
つまり、役員報酬のカットが足りなかった分を社員の年収削減などで補うというわけだ。

実は、
今回の関電の再値上げは
「電源構成変分認可制度」に基づく申請である。
この略して「電変制度」とは、
原発停止による燃料費の増加分を、総原価を洗い替えることなく
電気料金に反映させるもの


福島原発事故後の2012年11月に新設されたこの制度が
適用されるのは昨年の北海道電力の再値上げに次いで2例目であり、
本来は役員報酬など査定の対象外なのだが、
関電経営陣の
「あまりに姑息なやり方」(消費者団体関係者)に
専門小委のメンバーも不快感を抑えかねて
ヒアリングでの追及になったという


そもそも1800万円という報酬額も、
経営危機に瀕している企業の経営陣としては決して安くはない。
液晶パネルの過大投資で苦境が続いているシャープの
役員報酬は平均1657万円だし、
会社更生法申請前の日本航空の社長だった西松遥(67)は、
年収960万円でバス通勤をしていたのだ。



・・・(後略)
by kuroki_kazuya | 2015-02-04 06:44 | 九電労組