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by 幸田 晋

一時凌ぎのアベノミクスでは“日本病”の悪化は止められない

一時凌ぎのアベノミクスでは
“日本病”の悪化は止められない


ダイヤモンド・オンライン 4月22日(水)8時0分配信より一部

● アベノミクスでは日本病を治せない

  “日本病”とは、海外のメディアが使った言葉ですが、90年代の初めにバブル経済が崩壊した後、長期にわたって経済が低迷していても、景気回復や財政再建ができない日本の状況を揶揄する言葉です。2000年ぐらいまでは「失われた10年」、2010年ぐらいまでは「失われた20年」といわれていました。

 この間の特徴は、短期的な政策である「財政政策」と「金融政策」で景気刺激策を行うことに終始してきたことです。財政政策とは、インフラなどを建設することに資金を使い、景気対策とすることです。インフラへの投資によって景気が良くなるとも考えられましたがその効果は薄かったようです。現在、日本の財政状態は逼迫しており、財政赤字は膨らんでいます。2014年末での財政赤字(政府総債務残高)約1200兆円の内、約4割はこの10年で増えたものです。

 金融政策とは世の中に資金を供給し、金利を下げて景気を刺激する。金利を下げ続け、ついにはゼロ金利となり、さらに量を増やせということで、量的金融緩和が導入されました。しかし、この財政政策と金融政策のフル稼働も、日本病を治すまでには至らなかったのです(米国では量的金融緩和からの脱却を「正常化」としてこの異常事態から早期の脱却を目指しています)。

 金融緩和をしても実体経済が資金を必要しないために、その資金は金融資産市場に流れ込み、現在、ミニバブルの様相を呈しています。金融資産を持つ者と持たない者との間で“格差”も広がりました。

 米国以外の先進国には似たような傾向があるのですが、経済が成熟化するにしたがって経済成長は鈍化し、“年配”の経済になっていくのです。

 通常、経済成長はGDP(国内総生産)の拡大でみます。それは国内でどれだけモノが生産されたか、経済を企業に例えれば、売上が伸びている状態が経済成長している(景気が良い)状態です。逆に景気が悪くなるというのは、企業でいえば売上が落ちていき、手をこまねいていると収益率も落ち、借金が増えていく。社員の給料も下がっていくことになります。行きつく先は“倒産”です。国でいうと“財政破綻”ということになります。こういう流れを、一言でいうと、“衰退”ということになります。 


・・・(中略)


 日本の財政問題についても、粗い数字ですが、だいたい95兆円を支出(歳出)していて、税金が昨年は多めで55兆円でした。つまり40兆円が赤字ということになります。つまり、約4割が赤字なのです。この数字を異常と思わないほうが、異常であると筆者は思います。企業としてはあり得ません。
月給55万円の人が、
毎月95万円使っていたら、
しかもそれを何年も続けていたら、
いずれ破綻することは明らかです。


財政赤字をもっと拡大して、永遠に国債を日銀に買ってもらえばいいなどと、おっしゃる方もいます。

 経済・金融教育の必要性が叫ばれて久しいですが、それは投資教育だけではなく、経済の基本的な考え方が大事であると考えます。借金は必ず返すとか、身の丈を超えた借金をしないとか、目の前のことだけではなくて、将来を考えてつらいことを嫌がらないとか。それは突き詰めれば「生き方」になってくると思います。


・・・(途中略)


【著者紹介】

しゅくわ・じゅんいち

博士(経済学)・エコノミスト。帝京大学経済学部経済学科教授。慶應義塾大学経済学部非常勤講師(国際金融論)も兼務。1963年、東京生まれ。麻布高校・慶應義塾大学経済学部卒業後、87年富士銀行(新橋支店)に入行。国際資金為替部、海外勤務等。98年三和銀行に移籍。企画部等勤務。2002年合併でUFJ銀行・UFJホールディングス。経営企画部、国際企画部等勤務、06年合併で三菱東京UFJ銀行。企画部経済調査室等勤務、15年3月退職。兼務で03年から東京大学大学院、早稲田大学、清華大学大学院(北京)等で教鞭。財務省・金融庁・経済産業省・外務省等の経済・金融関係委員会にも参加。06年よりボランティアによる公開講義「宿輪ゼミ」を主催し、この4月で10年目、180回開催、会員は8000人を超えた。映画評論家としても活躍中。主な著書には、日本経済新聞社から(新刊)『通貨経済学入門(第2版)』〈15年2月刊〉、『アジア金融システムの経済学』、東洋経済新報社から『円安vs.円高―どちらの道を選択すべきか(第2版)』(共著)、『ローマの休日とユーロの謎―シネマ経済学入門』、『決済システムのすべて(第3版)』(共著)がある。
Facebook宿輪ゼミ:https://www.facebook.com/groups/shukuwaseminar/
公式サイト:http://www.shukuwa.jp/

宿輪純一
by kuroki_kazuya | 2015-04-23 06:43 | 日本の今後