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by 幸田 晋

日本のインフラ・コストはなぜ世界一高いのか? 原発事故だけではない!? 東電のお家事情

日本のインフラ・コストは
なぜ世界一高いのか?

原発事故だけではない!?
東電のお家事情


BizCOLLEGE 7月1日(水)10時22分配信より一部

インフラ・コスト世界最高水準の日本

 東京電力福島第1原子力発電所の原発事故以来、およそ2割上がった電気料金の計算書を見て溜息をついている人が多いことだろう。事故以前から「電気料金をはじめとする日本のインフラ・コストは世界一高い」と言われ続けてきた。前提条件に為替や税なども関わるので単純な比較は難しいが、
先進国の中では
火力発電比率の高いイタリアなどを除けば、
世界最高水準の料金で
あることに間違いはない。


 ちなみに筆者の卑近な例で恐縮だが、東京の筆者宅と米カリフォルニアに住む息子家族宅を平均的に比較すると、ドル高の今日でも東京の方が電気料金でおよそ2倍近く、ガス代では3倍近く高い。我が家は二人家族のマンション、息子宅は四人家族の戸建であり、歴然とした差を実感している。

 今年の東京電力の決算を見てみよう。

 <図4-1>の2015年3月期連結損益計算書を見ると、経常収益(売上高ほか)が約2%増え、経常利益は前年比2倍強の2,080億円、当期純利益は3%増の4,516憶円となっている。数字だけ見ると超優良企業のようであり、経常利益は申し分のない収益力を示しているかのようである。

また当期純利益が
経常利益の2倍強になっているのは、
特別利益が大きいことによる。
東京電力が
実質的に国家管理下にあり、
原子力損害賠償支援機構から
交付金が支給され、
実際の損害賠償金支払額などと差額が
純利益に加算され、
膨らんでいるのだ。


電力会社の最大資産は「送変電設備」

 損害賠償金が支援機構からの交付金でカバーされるのはわかるとしても、健全企業のような経常利益が出るのはなぜなのか。事故以来、国民に広く知られることになったが、
それは10電力会社に
「確実に儲かる仕組み」が
認められてきたからである。

それは「発・送・配電の一体事業」「地域独占」、
そして「総括原価方式による料金設定」の
三位一体制である。


 この制度のおかげで、各電力会社は国家的な全体最適とはほぼ関係なく、「地域最適」の経営を進めてきたといわれている。お互い干渉せずに競争することもなく、高い自由度の下で料金を決め、その収益を元にして積極的に設備投資を行うことができた。その結果、世界最高品質の電力を豊富に提供し、日本の高度成長を強力にバックアップすることができた。

 日本の停電時間は一軒当たりに平均すると年間20分に満たず、諸外国と比べて品質レベルは最高である。そしてこの高品質もあって、電気代も最高となったのである。

 東京電力の連結貸借対照表を見ると、最大の資産は「電力事業固定資産」である。大規模装置型インフラ・サービス業なので当然である。しかしさらにその内訳を見ていくと、2014年度末で「発電設備2.4兆円」、「送変電設備2.5兆円」、「配電設備2兆円」となっていて、最大の資産は実は「送変電設備」であることがわかる。


重複投資で国家的に莫大な無駄が発生

 <図4-2>は福島の事故が起こる直前期2010年3月末の電力事業固定資産を、東京電力だけでなく、中部電力、関西電力と共に並べてある。

 3社分を合計すると、「発電設備4.6兆円」、「送変電5.9兆円」、「配電3.9兆円」となって、送変電設備がやはり電力の最大資産である。なぜ送変電にこれほどの投資がかかるのか? 投資が大きければ、それだけ維持コストもかかるはずである。

 最も大きな理由は、発電所が遠隔地にあるからである。例えば東電の原発は福島や新潟にあり、関電は福井にあり、中電は静岡にある。どの会社も最大の電力需要地である東京、大阪、名古屋から遠く離れているのだ。しかも東電と関電の原発は、他の電力会社のテリトリーに立地している。

 長い距離を送電すれば、電力ロスが多く発生する。したがって理想をいえば、需要地の近隣に発電所がある方が望ましい。しかし遠く離れて他社エリアに発電所が立地し、その結果送変電に莫大な投資額がかかり、しかもそれが各社の相互融通の少ない重複投資だとしたら、国家的に莫大な無駄が生まれていることになる。投資関連コストが総括原価の高さにつながり、料金に反映されているのはいうまでもない。

 ここでは挙げないが、事故後に「電力ムラ」のコスト意識の低さを象徴する事実が次々と明るみに出た。なぜこんなムダの多い電力インフラができてしまったのだろうか。


・・・(中略)


わが国の電力体制は65年の歴史を経て、やっと変わろうとしている。電力事業法の改正によって、来年から電気の小売り自由化が始まる。また2020年には電力会社の発電部門と送配電部門が分離されることになっている。料金規制も撤廃される予定である。

 今年4月時点で、経産省に新規参入を届け出た事業者は600を超えた。これから昭和初期のような、入り乱れた競争が始まろうとしている。現実にeコマース関連のネット企業は、電力料金を即座に価格比較できるサービス開始を計画しているし、通信やガスとのセット販売、ポイント加算、また再生エネルギーだけの会社を選べるサービスなど、消費者の選択肢は飛躍的に増えそうだ。

 さらに2020年に送配電部門が分離されて統合が進めば、送電線や電柱が共同利用されて、従来のような重複投資が解消し、効率化が急速に進む可能性がある。

日本には北から南まで実質的に約1.5時間の時差がある。
例えば夏場の電気消費量のピークは午後2~3時だが、
発電会社が蓄電も含めて融通し合うことができると
省エネに大いに貢献できるという。


次回は、スマート住宅を巡る日米企業の攻防を見ていくことにしよう。

(山根 節:若手ビジネスパーソンのためのMBA講座)
by kuroki_kazuya | 2015-07-02 06:15 | 九電労組