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by 幸田 晋

値上げ頼みの電力決算、始まった深刻な客離れ

値上げ頼みの電力決算、
始まった深刻な客離れ


東洋経済オンライン 11月22日(日)6時5分配信より一部

 「ラッキーな要因があったことは間違いない」と、東京電力の廣瀬直己社長は2016年3月期上期の決算発表の席でそう語った。14年末からの原油価格下落によって燃料費が急減。電気料金改定までの「制度上のタイムラグ」(東電)による差益が、2210億円にも膨れ上がったためだ。

■ 上期は一過性のタイムラグ差益が膨らむ

 こうした原油価格下落によるタイムラグ差益は、LNG(液化天然ガス)など原油連動の燃料比率が高い、中部電力や関西電力など大手でも大きく、上期にそれぞれ1050億円、680億円に達し、利益押し上げ要因になった。

 電力10社合計で見ると、連結純利益は上期だけで、東日本大震災・福島第一原子力発電所事故前の10年3月期通期の数字を上回った。

 東電は連結経常利益で過去最高。中部電力は連結、単独決算とも各利益段階で最高益を更新。東電では目標とする、単独自己資本比率15%への回復が見えてきたことを踏まえ、17年3月期中に社債市場への復帰を目指している。

 もっとも、タイムラグ差益を除いた実態は、各社とも薄氷を踏む状況が続く。

 関電では、タイムラグ差益と再値上げ(大企業向けは4月、家庭向けは6月から)による増益分を差し引くと、連結営業利益は600億円に満たない。中部電力では「タイムラグ要因と豊富な降水量による水力発電の増益分を除くと、実質的な単独経常利益は前期並みの400億円程度」(勝野哲社長)という。

 為替や燃料価格の変動を電気料金に反映させる、「燃料費調整制度」のタイムラグ差益は、原油価格の変動幅が足元では小さくなっているため、今下期には大幅に縮小するとみられる。その一方で、火力発電所の修繕費や、電力小売り全面自由化を目前にしたシステム構築費用などが、利益の圧迫要因になる。

 各社にとって、とりわけ頭痛の種となっているのが、原発再稼働の道筋がなかなか見いだせないこと。上期には九州電力の川内(せんだい)原発1号機が営業運転にこぎ着けたものの、九電と、伊方(いかた)原発3号機の審査が進んでいる四国電力を除けば、再稼働は見通しが立っていないのが実情だ。

■ 原発維持に年1.4兆円がかかる

 前期は原発による発電量がゼロ(=売り上げゼロ)にもかかわらず、原発部門の維持に、原発を持たない沖縄電力を除く9社合計で、1兆4000億円超の費用がかかった。今期も同じ水準かそれを上回る費用が発生する。

 一方で、原発については原子力規制委員会による新規制基準への適合性審査が進められる過程で、耐震補強などの安全対策工事に伴う支出も膨らみ続けている。

 この9月末時点でも、東北電力で、女川(おながわ)、東(ひがし)通(どおり)の両原発に関する安全対策工事費(多くが設備投資)の見積額が、従来の1500億円程度から「三千数百億円」(東北電力)にハネ上がった。北陸電力や四国電力も増額を迫られ、9社全体の安全対策工事の所要額は3兆円を上回る規模に膨れ上がっている。今後、再稼働が進んだ場合には、減価償却費の急増となって損益に跳ね返ってくる。

 それでも各社が原発再稼働を業績回復の頼みの綱にするのは、前出の1兆4000億円超というコストの重さによるところが大きい。

 東日本大震災前の10年3月期単独決算では、原発の稼働によって約4兆円の電気料金(本誌推定)を稼いだ反面、ウラン燃料の消費を含む原発のコストは約1兆7000億円だった。それが「原発稼働ゼロ」の15年3月期では、原発による電力の売り上げがゼロだったのに対し、原発の費用は約1兆4000億円。差し引きで年間約4兆円の収支悪化である。通常の企業であれば、倒産に追い込まれるインパクトの大きさだ。


 厳しい状況の電力会社を救ったのが電気料金の値上げだった。13年3月期から3期にわたり、北陸電力、中国電力、沖縄電力を除く7社が値上げに踏み切った。関電と北海道電力では値上げは2度にわたり、料金が自由化されている企業向けでは、値上げ幅がそれぞれ累計30%弱、30%強にも達した。料金が規制された家庭向けでも各20%弱、20%強の値上げとなった。

 だが、値上げは同時に、深刻な顧客離れを引き起こす。

 購入電力が割高になったことから、官公庁や大企業から電力供給契約の解約が相次いでいるのだ。顧客離れについて、電力各社は「契約の離脱」という表現を用いているが、12年3月に始まった電力の部分自由化以降の累計で、東電では離脱が4万8250件、880万キロワットに達した(9月末現在)。大口需要を中心に、ガス会社や石油会社系列の新電力などから、契約を奪われたことを意味する。

・・・(後略)
by kuroki_kazuya | 2015-11-23 06:25 | 九電労組