スキーにはまっています。


by 幸田 晋

2016年4月から電力完全自由化ってどういうこと? (下)

2016年4月から
電力完全自由化ってどういうこと? (下)

小坂正則(脱原発大分ネットワーク)

たんぽぽ舎です。【TMM:No2661】
2015年12月11日(金)午後 09:51
地震と原発事故情報より一部

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┗■3.2016年4月から電力完全自由化ってどういうこと? (下)
 |  じゃあ2020年まで待たなくてはならないの?
 |  電力会社の顧客が一気に移ったら電力不足に?
| 電力自由化の最大目的は「再生エネ電力の売買権の実現」
| やがて来る全面自由化に向けて準備すべきこと
 └──── 小坂正則(脱原発大分ネットワーク)
 (上)は、12月10日【TMM:No2660】に掲載

5.じゃあ2020年まで待たなくてはならないの?
 実はその問いに関しては私にも本当のところよく分からないのです。8.1兆円と言われる電力産業への新規参入の受付を経産省は8月から受け付けていますが、10月現在で48社が小売電気事業者の申請をしたそうです。ただ今後申し込む予定の企業は700社以上と言われています。そんなに多くの企業が参入しようとしているのですが、実態としては大企業の50社そこそこだろうと思われます。あとは申請だけはしておこうという独立発電事業者でしょう。
 代表的な新電力がNTTと東京ガスと大阪ガスが一緒に作った「株式会社エネット」です。東京ガスや大阪ガスもNTTもガスや電話とのセット割引で顧客をつかもうと計画しているそうです。これに対抗して東電はソフトバンクと提携してソフトバンクの顧客を狙ってセット割引を全国展開しようと計画中だそうです。
 そのほかには、新日鉄や丸紅や住友商事系列や大和ハウス系列や伊藤忠系列。イーレックス(株)は大分県庁への販売実績がある企業です。
 変わり種ではハウステンボスも参入するそうですし、ブラック企業で有名なワタミも「ワタミファーム&エナジー株」という名前で新規参入予定です。
 これらの市場参入予定の企業の名前は挙がっているのですが、具体的な料金や申し込み方法などはまだ何も公表していません。だって肝心の託送料(送電線使用料)の電力会社による発表がないのですから、料金など決めようがないというのが現実だと思います。つまり、今のところ何も分かっていないのです。

6.電力会社の顧客が一気に移ったら電力不足に?
 2014年時点での新電力(PPS)72社の企業向け電力販売のシェアは5.72%(2,900GWh)だそうです。それでも随分増えた感はありますが、これが一気に2〜3割などということになったら、販売する電力が足りなくなってしまうでしょう。そこで各新電力にも業務提携という形で既存の電力会社が電力供給するというのです。
 つまり、九電管内に新規参入する新電力へ関電や東電が電力を供給するという電力会社間競争に新電力が使われる可能性があります。私たち脱原発派としては、新規参入企業は原発の電気だけは販売しないでほしいものです。
 ただ、これは致し方ないかもしれません。イギリスなどでは電力市場取引が活発です。日本にも電力市場取引所はあるのですが、電力会社が売り惜しみをしているので、新規参入企業は「売りたくても売る電力がない」という問題があると言われているのです。
 だから一気に新電力に顧客が流れて来れば、既存の電力会社の電気が余って、電力市場に売るしか方法がなくなる電力会社も出てきて、電力市場取引が活発化する可能性があります。そうなれば、それだけで厳しい価格競争が生まれて、高コストの原発は市場から排除されていく可能性が出てきます。
 
7.電力自由化の最大目的は「再生エネ電力の売買権の実現」
 電力自由化はそう簡単な問題ではないということ、皆さんにも少しだけ理解してもらえたかもしれませんね。ただ、一般家庭など低圧電力の市場開放がなぜ必要なのかというと、例えば、東電は、企業への高圧電力の販売が6割で、残り4割が一般家庭などの低圧電力だそうですが、利益は低圧が9割で、6割の電力を販売している高圧は僅か1割しかもうけはないそうなのです。ですから、低圧電力が電力産業の利益の大元なのです。
 この巨大な市場を自由化することで電力産業という一部の「原発マフィア」に独占されてきた巨大なマーケットが市場開放されて透明化するのです。
 私はマーケットが活性化して電力需要が伸びることについては賛成しかねますが、競争が生まれたら利益率が下がることだけは事実です。
 ですから「原発マフィア」のような反社会的組織のつけいる隙をなくして電力産業の市場ルールを適正化させることにつながることが何よりも必要なことだと思います。
 電力自由化の目的を国や産業界では「電気料金の低減化」に求めていますが、私は全く逆です。電気料金は安すぎます。携帯へ支出する金額が月に1万円で電気料金が月に5千円や6千円などというのはどう考えても電気料金が安すぎます。
 もちろん電気料金も払えないような生活困窮者の方にとっては1円でも安い方がいいのでしょうが、現在の電気料金が安い理由は環境負荷を与えている放射能のゴミや二酸化炭素や窒素酸化物などの毒物を元に戻す費用を金額に反映していないからです。これらを正当に計算したら電気料金は現行の10倍でも少ないくらいだと私は思います。
 特に、原発は100倍でも足りないくらいのコストがかかっているのです。だって放射能を無毒化する方法などないのですから。それらは将来の子どもたちに、そのツケを全て払わせようとして現在の私たちの電化生活が繰り広げられているのです。
 ですから、市場開放して適正な価格で再生エネ電力を求めている市民の購買権と再生エネ電力を販売する自由を実現することこそが、脱原発を求める私たちにとっては電力自由化の最大の目的なのです。

8.やがて来る全面自由化に向けて準備すべきこと
 そこで私たち脱原発派は何をすべきでしょうか。先日11月1日の松山集会で広瀬隆さんが「来年の4月から電力は自由に買える社会が来ます。皆さん既存の電力会社から原発の電気ではない新電力へ鞍替えしましょう」と話していました。
 私もそんな状況が来ることを望んでいますが、4月から一気にそうなるかどうかは分かりませんが、徐々には見えてくるでしょう。そこで、どの会社がうさん臭くて、どの会社が良心的な会社なのかを見極める目を持つことが必要でしょう。
 当面は原発の電力が混じっているかどうかを見極めながら、再生エネ電力100%の会社を応援することなどが必要です。
 そして、本当は私たち市民が電力消費者組合を作って、自分たちに必要な電気は自分たちで作って、足りない分は互いに分かち合うという、将来の世代に環境負荷のツケを残さない生活を実現することが大切なのです。
 エネルギーは電力だけではありません。薪も立派なエネルギーです。太陽熱温水器も立派なエネルギーです。私たちの暮らしがその地域の特性に一番合ったエネルギーを使いながら環境負荷が少なくて、安心で安全で楽しい暮らしができるようなエネルギーを賢く選ぶ生活こそ実現させなければならないのです。 ある生協が、メガソーラーばかりを各地に作っていますが、そんな偏った電力生産体制を築くのは間違いです。もし、生協が電力事業に手を出すなら、生協にしかできない方法を考えるべきです。それは、太陽光をやるのなら組合員の屋根を借りたり、いまある組合員の太陽光発電の電気を購入して売るとか、小水力やバイオマスで地域の林業や農業との連携を図ることなど、生協にしかできない高度な連携を模索すべきです。
 これからは、私もできる限り私にしかできないエネルギー政策を実現させるために仲間と知恵を出し合っていきたいと思います。 (了)

 ※「つゆくさ通信」第134号2015年11月20日 発行:「脱原発大分ネットワーク」より転載
by kuroki_kazuya | 2015-12-12 06:15 | 九電労組