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by 幸田 晋

なぜ原子力規制委はSPEEDI活用をきらうか

なぜ原子力規制委は
SPEEDI活用をきらうか

  UPZ(緊急時防護措置準備区域)30kmの説得力が無くなるから?!
木村雅英(再稼働阻止全国ネットワーク)

たんぽぽ舎です。【TMM:No2742】
2016年3月28日(月)午後 09:25
地震と原発事故情報より一部

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┗■2.なぜ原子力規制委はSPEEDI活用をきらうか
 |  UPZ(緊急時防護措置準備区域)30kmの説得力が無くなるから?!
 |  原子力規制委員会は原発再稼働推進委員会!その88
 └──── 木村雅英(再稼働阻止全国ネットワーク)

 昨年4月には産経新聞でさえ次の報道をした。
<SPEEDI削除決定へ 自治体反対押し切る 規制委、原子力災害対策指針改正>http://www.sankei.com/affairs/news/150419/afr1504190001-n1.html
 そして本年3月11日には原子力閣僚会議で状況が変わったが規制委の態度は同じだ。NHKの記事の一部を引用する。
<原子力規制委 SPEEDI緊急時の活用否定的見解
 政府の原子力関係閣僚会議が今月11日、原発事故の際、放射性物質の拡散を予測するSPEEDIなどのシステムを自治体がみずからの責任で活用できるとしたことについて、原子力規制委員会は、緊急時の予測は信頼性がないとして、改めて緊急時の活用に否定的な見解を文書にまとめた。
田中委員長「住民が大混乱起こすおそれ」、資源エネルギー庁「理解得られるよう調整したい」、滋賀県「方向性分からず困惑」、新潟県知事「住民の理解得られるか疑問」>

 福島第一原発事故における40km離れた飯館村へのプルーム到達を考えれば、自治体のSPEEDI使用要請は当然だし資源エネルギー庁も応じたにもかかわらず、規制委がSPEEDIをきらう理由は何だろう。
 それは、SPEEDIを使うとUPZ30kmでは狭すぎることが明らかになるからだと私は思う。
 規制委がUPZ決定の根拠にした拡散シミュレーションは、気象データを時間的にも空間的にも一様と仮定して理論値を求めるいい加減なものである。この拡散シミュレーションには次の説明がある。
  (https://www.nsr.go.jp/data/000024430.pdf)
<【拡散シミュレーションの限界について】拡散シミュレーションは、以下のように精度や信頼性に限界があることを踏まえて、参考とすべき。
○地形情報を考慮しておらず、気象条件についても放出地点におけるある一方向に継続的に拡散すると仮定している。
○シミュレーションの結果は個別具体的な放射性物質の拡散予測を表しているのではなく、年間を通じた気象条件などを踏まえた総体としての拡散の傾向を表したものである。
○初期条件の設定(放射性物質の放出シナリオ、気象条件、シミュレーションの前提条件等)や評価手法により解析結果は大きく異なる。
○各サイトで実測した1年分の気象データ8760時間(365日×24時間)を用いているため、すべての気象条件をカバーできるものではなく、また今後の事故発生時の予測をしたものでもない。>
 一方、数100億円かけて開発されたSPEEDIは、
<SPEEDIシステムは、放射性物質の環境中への放出量及び事故の起きた施設周辺の気象観測データを入力することで、大気中での放射性物質の拡散挙動を計算し、放射性物質の空気中濃度及び人の被曝線量を予測する。計算された結果は、SPEEDIシステムが保有する全国14個所の原子力施設周辺の地理情報を用いて、施設周辺の地図上にカラー表示されるようになっており、防災対策に必要な情報を迅速かつ正確に提供することが出来る。>(日本原子力研究所の説明、
http://www.aec.go.jp/jicst/NC/about/ugoki/geppou/V29/N04/198410V29N04.html)
 実際に、規制委サイトの「SPEEDIの計算結果について」によれば、飯館村の汚染も予測できているのみならず、東京にまで放射性物質が到達している計算例も図示されている。起こり得る特定の気象条件によっては30km以遠に拡散するのは当然だ。
  http://radioactivity.nsr.go.jp/ja/list/201/list-201103.html

 規制委が設置法にあるように人の命と健康と環境を守るつもりならば、SPEEDIを使ってUPZ30kmの妥当性を検証するべきだ。そして、周辺自治体のSPEEDIを活用した避難検討を支援するべきだ。


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┗■3.老朽原発はなぜ危険なのか
 |  高温、高放射線にさらされた配管等の腐食(とくに溶接部)は深刻だ
 |  木原壯林さん (若狭の原発を考える会)に聞く
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  老朽原発がとりわけ危険であることは、川内原発1号機が、再稼働(2015年8月11日)の10日後に早速、復水器冷却細管破損を起こし、高浜原発4号機が、再稼働準備中の2月20日、1次冷却系脱塩塔周辺で水漏れを起こしたことからも明らかだ。
 いずれも、重大事故に繋がりかねない深刻なトラブルだった。高浜原発4号機は2月29日、発電機と送電設備を接続した途端に警報が鳴り響き、原子炉が緊急停止した。関電が命運をかけたはずの再稼働はトラブル続きである。それは緊張感を持って施設を点検保守する体制が関電にはないことを示している。

◎大事故の危険性

  川内原発1号機は昨年8月20日、タービンを回した後、水蒸気を水に戻すために海水を流す復水器内のチタン細管(直径25ミリの肉薄細管)5本が破損した。同細管は、長期にわたって高温の海水に接触してきたもので、とくに溶接部において腐食が進んでいることは容易に予測された。このような細管は3系統約8万本あり、他の細管の破損も危惧される。
 また、この細管破損によって2次冷却水系に塩分が混入すれば、脱塩装置が設置されているとはいっても、残留の塩によって、185〜255度Cの高温になる2次系の熱交換器(蒸気発生器)の1万本以上ある伝熱細管(インコネル‥ニッケル—クロム合金)の腐食が加速されることが予測される。
 伝熱細管が、腐食・破損すれば、150気圧の1次冷却水が噴出し(=冷却材喪失)、大事故(メルトダウン)に至る可能性が大きい。

◎高浜4号機の緊急停止

  2月20日15時42分頃、高浜4号機の一次冷却材系統の昇温に向け、化学体積制御系統の水をほう素熱再生系統に通水したところ、「一次系床ドレン注意」警報が発信した。4号機の原子炉補助建屋の脱塩塔室前の床面に水溜り(約2メートル×約4メートル×約1ミリ‥約8リットル)が発見された。放射能量は約1.4×10の4乗ベクレルだ。
 この水溜り以外にも、床面に漏れた水が原子炉補助建屋サンプ等に回収されたものもある。これらを全て合わせると約34リットルになる。その放射能量は約6×10の4乗ベクレルだ。
 関電は、水溜りの推定放射能量である約1.4×10の4乗ベクレルは、国のトラブル事象の基準値3.7×10の6乗ベクレルに比べ、200分の1以下と発表した。
 22日になって、「弁のボルトの締め付け不備が原因」と発表した。たるみ切った検査だったことや、そもそも検査しにくい構造であることは明らかだ。
 一方、29日14時、多くの報道関係者が詰めかける中、高浜4号機の発電、送電のスイッチを入れた途端に、発電機、変圧器に異常電流を検知し、原子炉が緊急停止した。

◎老朽原発の問題点

イ.高温、高放射線にさらされた配管等の腐食(とくに、溶接部)は深刻だ。電気配線の老朽化も問題がある。 
ロ.コンピュータ制御や機器測定をしているが、コンピュータや計測機器は建設時とは全く異なっている。原子炉の大部分はそのままにして、これらの部分のみ交換したからだ。
ハ.建設時には適当とされたが、現在の基準では不適当と考えられる部分は多数ある。すべてが見直され、改善されているとは言えない。例えば、基準地震動の過小評価。安全系と一般系のケーブルの分離敷設の不徹底など。
ニ.建設当時の記録(図面など)が散逸している可能性があり、メンテナンスに支障をきたしている。
ホ.建設当時を知っている技術者はほとんどいないので、非常時や事故時の対応が難しい。
ヘ.とくに、ウラン燃料対応の老朽原発でMOX燃料を使用することは炉の構造上問題がある。 (3月17日「未来」第196号より許可を得て転載)
by kuroki_kazuya | 2016-03-29 06:25 | 核 原子力