スキーにはまっています。


by 幸田 晋

読売新聞が被曝事故原因は予算不足、不安を煽ったのは規制委と非難。的外れ・不当な主張

読売新聞が被曝事故原因は予算不足、
  不安を煽ったのは規制委と非難。的外れ・不当な主張
  「社説」では作業員の内部被曝はいつの間にか
  「なかったこと」にされている。間違った主張だ

     渡辺悦司(市民と科学者の内部被曝問題研究会)


たんぽぽ舎です。【TMM:No3104】
2017年6月17日(土)午後 08:43
地震と原発事故情報
より一部

┏┓
┗■1.読売新聞が被曝事故原因は予算不足、
 |  不安を煽ったのは規制委と非難。的外れ・不当な主張
 |  「社説」では作業員の内部被曝はいつの間にか
 |  「なかったこと」にされている。間違った主張だ。
 |  安倍政権と原子力マフィアが放射能で日本を滅ぼすのが先か
 |  安倍と原子力マフィアを国民が除去するのが先かという選択に
 └──── 渡辺悦司(市民と科学者の内部被曝問題研究会)

1.安倍首相が国会で公然と「読売新聞を熟読せよ」と発言したことは有名です。
 このことからも明らかなように、読売新聞は、公に、安倍政権と原子力マフィ
アの「御用新聞」と認められています。
 つまり、読売新聞を読めば、彼らが何を目論んで「共謀」しているかがはっき
り読み取れるというわけです。

 読売新聞2017年6月14日付社説「原子力機構にたるみはないか」も、その典型
的な一例でしょう。
   http://www.yomiuri.co.jp/editorial/20170613-OYT1T50167.html
 その表題から見ても、また文頭の「危険な核物質を扱っている、との自覚が足
りないのではないか」との表現を見ても、この社説は、事故を起こした原子力研
究開発機構を、その組織に蔓延している安全管理の杜撰さやたるみを、真正面か
ら批判しているように、思われるかもしれません。

 だが、そうではありません。

2.読売の社説は、原子力機構に「たるみがある」「自覚が足りない」と述べた
後、その原因の検討に移ります。
 同社説は、それが、原子力機構の組織や安全管理体制ではなく、予算や人材の
不足にあると断じ、原子力機構を批判する人々の側に矛先を転じます。
 こう言うのです。「もんじゅで1995年に発生したナトリウム漏れ事故の後、政
策の見直しが相次ぎ、機構は、事業の縮小・再編を余儀なくされた。予算や人員
が不足して、核物質や放射性廃棄物の管理が行き届かなくなったことは否めまい」
と。
 もし、この主張の通りだとするなら、事故の原因は、原子力機構の側、すなわ
ちその安全無視の組織的体質にあるというよりは、同機構の予算や人材を削減し
たことに、削減を主張し実行した人々の側に(も)あるということなのです。

 また、事故をなくすためには、さらに多くの予算と人材を原子力機構に投入す
るべきだ、そうでないと事故はなくならない、という主張にも読めます。
 事故を起こした原子力機構は、このように、安倍政権の御用新聞によって言い
訳してもらい、事故の責任から免責されるだけでなく、事故を理由として、予算
増と人材補充を主張してもらえるわけです。

 「(同機構の)予算や人員が不足して、核物質や放射性廃棄物の管理が行き届
かなくなった」という読売新聞の主張は、結局、今回の事故により、原子力機構
の予算不足・人員不足を世の人々はもっと理解し、もっと予算や人材を配分する
ようにしなければならないという「火事場泥棒的」論理で書かれていると言って
も過言ではありません。
 典型的な「モラルハザード」です。

3.さらに、同社説では、作業員の内部被曝は、いつの間にか「なかったこと」
にされています。
 「千葉県にある放射線医学総合研究所が全員を再計測した結果、プルトニウム
は検出されなかった。一部の人からアメリシウムという放射性物質が検出された
が、微量だ。放医研によると、健康への大きな影響はないという。」
 前回指摘しましたように、肺モニターのプルトニウム肺内被曝の検出限界は5
千〜1万ベクレルです。

 このことは、全く忘れられて、いつの間にか被曝はアメリシウムで「微量」に
され、プルトニウムでは「不検出」すなわち「ない」とされています。
 さらに、将来についてまで、「大きな健康影響はない」と断定されてしまって
います。
 もちろん「大きな」という限定詞が何を意味するかは不明ですが、「がんなど
の」と読むのが普通でしょう。

 プルトニウムの被曝量は、原子力機構の評価では、アメリシウム被曝量の100倍
程度です。同社説の「微量」とされる数字でも、実際には、その100倍です。
 放医研は、そのことを知っているので、アメリシウムの内部被曝量は「個人情
報」を口実に公表していません。
 つまり、アメリシウムで数10ベクレルでも、プルトニウムでは数1,000ベクレル
です。
 いま、この「微量」を食品基準の100ベクレルでとれば、プルトニウムでは1万
ベクレルです。
 何度も言うようですが、7400ベクレルが肺内にあれば、ビーグル犬にがんを引
き起こすのですから、決して「微量」ではありません。

4.読売新聞の言い訳はこうです。
 「当初、高い数値が出たのは、皮膚の皺(しわ)などに付着した微量のプルトニ
ウムが原因だとみられる。これによる放射線を、内部被曝と誤認した。わずか
100分の1ミリ・グラムのプルトニウムでも、今回の最大値が計測されてしまう。」
 この具体的数値100分の1ミリ・グラム(10マイクログラム)のプルトニウムの
被曝量は、およそ2万5000ベクレルに相当しますので、この評価だと、当初観測
された2万2000ベクレルのプルトニウムは、全て皮膚に付着していたもので、プ
ルトニウムの内部被曝は「ゼロ」となります。

 ところが、放医研は、プルトニウムの体外排出を促進するキレート剤DTPA
を処方した事実を認めており、ここからは、明らかにプルトニウムの内部被曝が
現実にあったことが示唆されます。
 放医研自身が編さんした『人体内放射能の除去技術』にもその説明があります
(49〜55頁)。

このように、読売新聞は、プルトニウムによる内部被曝を全否定した後、今回の
「教訓」を導き出します。
 「危機管理上、機構の対応には、やむを得ない面はあるものの、内部被曝の不
確かな計測値が独り歩きして、混乱を助長したことは間違いない。今後の教訓だ」
と。
 それは、被曝事故があっても、今後は被曝量を「混乱を避けるために」「公表
しないようにせよ」と、間接的に要求するものです。

5.最後に、同社説の矛先は、「常陽」の再稼働に消極的とされる原子力規制委
員会へと向けられています。
 「原子力規制委は、当初の計測値を『半端な状況ではない』と判断した。無用
に不安を煽あおったと言わざるを得ない。」
 こうして、今回の被曝事故の責任は、予算・人材を「削減した」財務省と被曝
事故で「無用に不安を煽った」原子力規制委員会に転嫁されています。

 福島第一原発事故の健康被害をめぐって、政府・政府側専門家・研究所・マス
コミに見られている「共謀」が、今回の被曝事故でも同じように見られています。
 読売新聞は、あたかも事故が起きても予算・人材不足のためなのだから、事故
は「起きてもかまわない」と示唆しているようなものですが、このことは、今回
の事故だけにとどまりません。

 安倍政権と原発推進勢力の御用新聞のそのような姿勢は、同機構の同じ大洗事
業所にある高速炉「常陽」の再稼働の場合に起こるかもしれない事故の言い訳を
今からしているようなものなのです。

6.われわれは、福島第一原発事故でも、原発再稼働でも、六ヶ所再処理工場稼
働でも、すべてそうですが、安倍政権・原子力マフィアの御用新聞が、このよう
に、被曝事故を起こした張本人、今回は原子力機構を言い訳して正当化し、それ
によって次の事故が「起きてもかまわない」「不安を煽る方が悪い」「混乱を避
けるために情報は非公開に」と社説で主張するような、本当に恐ろしい危機的事
態に直面しているというほかありません。

7.安倍政権と原子力マフィアが放射能で日本を滅ぼすのが先か、安倍と原子力
マフィアを国民が除去するのが先か、という選択になっているのです。


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┗■2.世界が震撼した大火砕流
 |  「火山の休止期間が長いと人々も自治体もずっと噴火しない
 |  もの」と油断してはいけない
 |  警戒せよ!生死を分ける地震の基礎知識その202
 └──── 島村英紀(地震学者)

 6月は長崎県島原半島にある雲仙普賢(ふげん)岳で26年前の1991年に「戦後
最大」の火山災害を生んでしまった月だ。
 このときの火山災害は火砕流だった。2014年の御嶽噴火で戦後最大という記録
は塗りかえられたが、温度は300度Cを超え、流れ下る速さが新幹線なみの火砕流
は逃げられるものではなかった。43名が犠牲になった。いまでも火砕流のあとが
はっきり残っている。

 しかし、雲仙普賢岳ではかつて日本史上最大の被害者数を生んだ火山災害が起
きたことがある。火砕流ではなく山体崩壊だった。
 江戸時代の1792年のことだった。普賢岳で噴火と同時に起きた強い地震で隣の
眉山(まゆやま)が崩れた。
 大量の土砂が島原の海になだれ込んで津波を起こし、有明海対岸の肥後(熊本)
を襲った。犠牲者は対岸のほうが多く、全部で15000人にもなった。「島原大変、
肥後迷惑」と称されるようになった事件だ。

 この山体崩壊に見られるように、そもそも火山は、火山灰や噴石や火砕流が積
み重なって山を作っているものだから、とても崩れやすい。
 たとえば、静岡・御殿場市は標高500メートルほどのなだらかな斜面に拡がって
いるが、これは約3000年前に富士山の山体崩壊で作られた平坦面なのである。
 しかも、この山体崩壊は、富士山の噴火が起こしたものではなかった。近くで
起きた地震による崩壊だったのだ。火山が噴火しなくても、揺すぶられれば山体
崩壊が起きることがある。

 18世紀の大災害後、当時の島原藩主は復興のためにハゼの木の育成を奨励した。
ハゼは実から「ろう」が作れる。ろうは、当時の重要な照明だったろうそくの原
料だった。島原は約10万本のハゼ林が広がる国内屈指の産地になり、最盛期には
200軒以上の工場や工房でろうそくが作られるようになった。
 ハゼから採れるろうで作ったものは現在は「和ろうそく」と言われる。
 しかし、明治以降は石油を原料とする安価な「洋ろうそく」が普及し、電気が
普及して照明の用途もなくなって島原の和ろうそく産業は衰退した。だが、和ろ
うそくはすすが出にくく、仏壇や仏具などを汚しにくい特長があるので、細々な
がら続いていた。

 そこへ追い打ちをかけたのが、1990年から5年半にわたった普賢岳の噴火だっ
た。ハゼ林が残っていた山腹の千本木地区が土石流や火砕流に襲われたのだ。
 ところで、雲仙岳ではこの1792年に火山災害を起こした噴火以後は、約200年間
噴火はなかった。噴火が再開されたのが1990年。その翌年に大災害が起きてしま
ったのだ。約200年という長い休止期間のあとで活発化したのである。

 日本のほかの火山でも休止期間が長いと、人々も自治体も、ずっと噴火しない
ものだと油断していることが多い。

 たとえば富士山は1707年の最後の噴火後300年間は静かなのだが、警戒は怠れな
い火山の一つなのだ。地球にとっては200年や300年は、ごく短い時間なのである。

(島村英紀さんのHP http://shima3.fc2web.com/
「島村英紀が書いた『夕刊フジ』のコラム」より2017年6月16日の記事)

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by kuroki_kazuya | 2017-06-18 06:15 | 核 原子力