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by 幸田 晋

東芝「メモリ事業売却」でも炸裂するか「ウラン爆弾」

東芝「メモリ事業売却」でも

炸裂するか「ウラン爆弾」


新潮社 フォーサイト 9/6(水) 6:00配信より一部

https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20170906-00542734-fsight-bus_all

 東芝の半導体メモリ事業売却が最終局面で迷走している。8月下旬には、「(従来からの事業パートナーだった)米ウエスタン・デジタル(WD)を軸にした日米連合への売却で大筋合意」と報道されたが、結局、売却先を決められぬままタイムリミットの8月31日を越えた。メモリ事業の売却による債務超過の回避は危うくなった。
仮にその関門を突破したとしても、
東芝には第2第3の関門が待ち受ける。

まだ報じられていないのは、
原子力発電所事業に関連した「ウラン爆弾」だ



■「どうやって利益を稼ぐのか」

現状を説明しよう。
東芝は2006年、
約6600億円で米原発大手の「ウエスチングハウス(WH)」を買収した。
これが約1兆4000億円の損失を生み、
現在同社は5530億円の債務超過に陥っている


通常、銀行は債務超過の会社に融資をしない。融資を引き揚げられては倒産してしまうから、東芝は「2018年3月末までにメモリ事業を売って2兆円を調達し、必ず債務超過を解消します」と言って銀行をつなぎとめている。

 銀行も自分たちが「東芝倒産の引き金を引いた」とは言われたくないから、「本当に大丈夫なのか」と怯えつつ融資を継続している。
東芝メモリ売却で期限の2018年3月末までに
2兆円を調達して債務超過を解消できなければ、
その時点でゲームオーバー。
東芝は経営破綻する


・・・(途中略)


■売れなければ1兆円の損失

 東芝が抱える時限爆弾は2つある。1つは、すでによく知られた米テキサス州フリーポートでのLNG(液化天然ガス)事業だ。東芝は米国のテキサス州で「サウス・テキサス・プロジェクト(STP)」と呼ぶ原発開発プロジェクトを進めていた。だが米国ではシェールガス革命で原油価格が劇的に下がり、電力市場における原発の価格競争力が大きく低下した。東芝への発注元である米国の電力会社は「STPを建設しても電気が売れないのではないか」と心配し始めた。

 そこで、東芝に米国で原発を作らせたい経済産業省が目をつけたのが、天然ガスの液化事業だ。STPに近いフリーポートに天然ガスの液化プラントを作る。天然ガスの液化は莫大な電力を消費するから、STPは大口顧客を獲得することになり、事業のフィジビリティが上がる。経産省は東芝の背中を押して、フリーポートの天然ガス液化プロジェクトに出資させた。出資の見返りに、東芝は2019年から20年間、毎年220万トンのLNG権益を獲得した。

 しかし東芝がフリーポートに出資した後、資源バブルが崩壊してLNGの相場は急落。市場にはLNGがだぶついており、東芝が獲得するLNGは売れない可能性がある。仮に全く売れないとすると、東芝は1兆円近い損失を計上することになる。


■完全なお荷物

さらに東芝は、
LNGより厄介な爆弾を抱えている。
原発の燃料であるウランだ


東芝はWHを買収した翌年の2007年、カザフスタンでウラン開発を進める国営企業「カザトムプロム社」の関連会社「ハラサン事業持ち株会社」に1億2150万ドル(約120億円)を出資した。2009年にも5500万ドル(約55億円)を追加出資している。一連の投資で東芝は年間600トンのウランを獲得することになっていた。

 電機メーカーの東芝がウラン開発に手を伸ばした背景にも、経産省の「国策」がある。
東芝がWHを買収した2006年頃、経産省は「社会インフラのパッケージ型輸出」を産業政策の中心に置いていた。

・・・(途中略)

 そこで登場するのがパッケージ型輸出だ。初期の構想は、「東芝が原子炉を作り、東京電力が運転し、丸紅がウランを供給する」というフォーメーションだった。

しかし資源ビジネスの難しさを知る丸紅は土壇場で腰が引け、
福島第1原子力発電所の事故で東電も海外事業どころではなくなった。

それでも原発輸出を推進したい経産省は、丸紅に代わって東芝にウラン開発を依頼。

経団連会長を目指していた佐々木則夫社長(当時)が、
点数稼ぎのためこれに乗り、
資源ビジネスではズブの素人の東芝が、
資源の中でも難しいウランの開発に参入することになった。

 福島第1原発の事故で多くの国が脱原発、減原発に向かい始めた後も、東芝のウラン開発は止まらなかった。2012年には西アフリカのニジェールでウラン開発をしているカナダの「ゴビエックス」社の転換社債3000万ドル(約24億円、当時)を引き受け、大型原発1基の年間使用量に匹敵する年60万ポンドのウラン権益を確保した。

 ゴビエックスは2014年、トロント証券取引所で株式を上場したが業績はさえず、現在の株価は初値の10分の1以下に沈んでいる。同社に10%近く出資している東芝は大きな含み損を抱えている。さらに東芝はゴビエックスから年間60万ポンドのウランを14年間に渡って引き取る契約になっており、米フリーポートのLNGと同様に売り先が見つからなければ、最大で100億円近い損失を抱えることになる。

 つまるところ、東芝のウラン関連の「隠れ損失」は、ハラサンとゴビエックスで総額300億円に及ぶ可能性がある。LNG事業が抱える1兆円近いリスクに比べると小さく見えるが、一般的な資源であるLNGは損切りで売ろうと思えば買い手は見つかる。

これに対しウランの取引は特殊だ

東芝は経産省の国策に乗り、原発とウランをセットで新興国に売る腹づもりだっただろうが、
WHが経営破綻し、海外原発事業から撤退することになった今となっては、
ウランは完全なお荷物でしかない。


■隠れ損失が他にも

冒頭で述べたように、
メモリ事業を切り離した後の東芝の営業利益は
100億円に届くかどうかの水準にまで落ち込む。

そこで300億円の隠れ損失が顕在化すれば、
それは綱渡りの資金繰りを続ける東芝の
致命傷になりかねない


・・・(後略)
by kuroki_kazuya | 2017-09-07 06:25 | 資本