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by 幸田 晋

朝米首脳会談の歴史的意義と今後の課題

朝米首脳会談の歴史的意義と
今後の課題

   
浅井基文 (元外交官、政治学者)

たんぽぽ舎です。【TMM:No3409】
2018年7月6日(金)午後 07:58
地震と原発事故情報
より一部

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┗■1.朝米首脳会談の歴史的意義と今後の課題
 └──── 浅井基文 (元外交官、政治学者)

《事故情報編集部》より
 浅井基文氏のこの文章は、今の時節にとても合った内容の深いものです。
 メールマガジン転載について快諾を得ましたので全文を紹介します。


<朝米首脳会談の歴史的意義>-画期的、歴史的な事件だ

 朝米首脳会談の結果について、アメリカ主流メディアをはじめとする既成エス
タブリッシュメントの評価はきわめて辛辣なものが多いようだ。
 それは、朝鮮民主主義人民共和国(以下「朝鮮」)に対する牢固とした不信・
敵意と、反エスタブリッシュメントを売り物にし、既成政治(特にオバマ)の成
果物を次々に破壊するズブの政治的素人・トランプに対する反感・軽蔑に基づく、
偏見に囚われたものだ。

 遺憾なのは、アメリカ主流メディアの圧倒的影響力のもとにある日本のマス・
メディアの評価もおしなべて批判的であり、そのことがまた、国内世論の受けと
め方をも支配していることだ。
 しかし、今回の朝米首脳会談は、第二次大戦終結後の現代史において、1972年
の米中首脳会談(ニクソン訪中)及び1986年の米ソ首脳会談(レイソキャビック)
を継ぐ画期的・歴史的な事件である。
 もちろん地政学的には、米中及び米ソ首脳会談のような世界規模のインパクト
は持ちえない。
 しかし、1945年以後の世界を支配してきた冷戦構造が地上において唯一残存し
てきた朝鮮半島が、今やその足かせを最終的に脱する第一歩を記した事実はやは
り特筆大書に値する。

 この歴史的ドラマの最大の立役者はもちろん金正恩である。アメリカと対等に
渡り合える唯一のカードとして核デタランス確立に邁進(その間は対中関係が谷
底まで落ち込むことも厭わなかった)し、カードを手にした年初以来は果敢な外
交を展開して、朝中、北南そして朝米の首脳会談を実現させた手腕は、これまた
世界の外交史に名を連ねるだろう。

 また、今回のドラマは歴史の妙味をも実感させる。勇猛果敢の金正恩、剛毅木
訥の文在寅、猪突猛進のトランプ、この絶妙な役者のまったく偶然の組み合わせ
によってのみ今回のドラマが成立した。
 しかし、その偶然を通じて歴史は自らを貫徹するということだ。

 この歴史的ドラマを可能にした陰の主役は中国だ。中国は2003年以来のいわゆ
る6者協議(北南中露米日)を主導してきた。
 習近平は、トランプが敬意を素直に口にする数少ない人物であると同時に、金
正恩の3度にわたる訪中(しかもわずか3ヶ月の間に)が如実に示すように、金
正恩とは肝胆相照らす仲を構築した。習近平の介在なしに朝米首脳会談の実現は
なかっただろう(3度目の朝中首脳会談で、金正恩は「中国の党と政府が朝米首
脳の対面と会談の成功裏の開催のために積極的で真心こもった支持と立派な協力
を与えたことに謝意を表した」と朝鮮中央通信は報道した)。

 また、1.朝米首脳会談実現までの一連の経緯を経て朝米間の立場の隔たりが
重要な点で埋まる可能性が生まれたこと、
 また、2.トランプが朝鮮の体制交代(レジーム・チェンジ)を追求しない点
で歴代政権と異なることを(おそらく習近平の助言を得ることによって)納得し
た金正恩と、商売人として培った直感力に絶大な自信を持ち、金正恩と相まみえ
た瞬間に彼を交渉相手として認めたトランプとの間に一種の「信頼」が成立した
ことも重要である。
 前者に関しては、長期にわたる同歩的互動の積み重ねによる問題解決を目指し
てきた朝鮮は、トランプ政権の目指す短期決戦方式に「うまみ」を見いだした。
 なぜならば、トランプの後の大統領が朝鮮の「体制交代」を追求しない保証は
まったくないからだ。

 他方、朝鮮半島問題の複雑さ・解決の至難さに無知だったトランプは、ようや
くそれを認識し、「プロセス」を踏むことが必要であることを口にすることとな
った。ポンペイオが議会証言で表明した「CVIDとCVIGの取引」が朝米双
方において実現できる可能性として認識された意義はきわめて大きい。
 後者に関しては、70年以上にわたって不信と敵意が支配してきた朝米関係が首
脳間の信頼と善意によって置換される可能性が生まれるというにわかには信じが
たい状況が現出しつつある(朝鮮中央通信報道文は「(両指導者が)敵対と不信、
憎悪の中で生きてきた両国が不幸な過去を伏せて互いに利益になる立派で誇るに
足る未来に向かって力強く前進し、もう一つの新しい時代、朝米協力の時代が開
かれるようになるとの期待と確信を披れきした」と紹介)。韓国紙・ハンギョレ
は「性悪説から性善説へのパラダイム転換」と形容したほどである。

 今一つ、朝米首脳会談の歴史的意義として忘れてはならないことは、今回の首
脳会談を経た朝鮮半島情勢はもはや2017年以前の最悪の事態に逆戻りすることは
あり得ないということだ。
 仮に朝米関係が暗転しても、「悪者・朝鮮」という国際的イメージはもはや通
用しない。米日が国際的制裁を叫んでも説得力はない。朝鮮は中国という後ろ盾
を確保したし、極東開発に取り組むプーチン・ロシアも朝露関係改善に意欲的だ。
 国連のグテーレス事務総長も、対米追随だった前任者(潘基文)とは異なり、
対米自主独立の姿勢を貫く。
 さらに、韓国・文在寅政権は北南首脳会談の成果である板門店宣言に基づいて
北南関係を改善することに大きな使命感をもって取り組む決意である。
 要するに、朝鮮を取り巻く国際環境は大きく変わったということだ。

<今後の課題>-3つの点

 朝米関係は最初にして大きな第一歩を踏み出した。
 しかし、朝鮮半島の非核化とその平和と安定を実現するために解決するべき課
題は山積しており、前途は決して安易な楽観を許さない。

 第一、トランプ政権の国内基盤が脆弱であり、しかもトランプ自身が短気かつ
気まぐれであって先が読めないこと。
 反オバマにおいてのみ一貫性があるトランプの支離滅裂は、いわゆる「朝鮮核
問題」の解決には前向きであるのに、イランに関する核合意(JCPOA)につ
いては、オバマ政権が同意した「最悪の合意」として一方的に脱退するという行
動に端的に現れている。トランプがいつ「心変わり」するかという不確実性は常
につきまとう。

 第二、2003年の6者協議以来一貫したテーマは「朝鮮半島の非核化」であって、
「朝鮮の非核化」ではないということ。
 つまり、朝鮮の非核化だけではなく、アメリカの対朝鮮半島核戦略・政策その
ものも対象であるということだ。
 具体的には、アメリカの韓国に対する拡大核デタランス(核の傘)及びアメリ
カが韓国に配備を進めつつあるTHAAD(注1)の問題だ。
 アメリカの拡大核デタランス戦略は世界規模のもの(欧州、日本にもかかわる)
であり、アメリカが簡単に交渉のまな板に載せることに応じるとは考えにくい。
仮に韓国について応じれば、欧州及び日本の反核世論を激発するだろう。

 韓国へのTHAAD配備に関して言えば、アメリカの真意はロシア及び中国の
核ミサイルに対する世界的監視網展開の一環という位置づけである。米韓はこれ
まで、朝鮮の核ミサイルに対するデタランスとして正当化してきたが、その理屈
からすれば、朝鮮の非核化に伴い不必要となるはずだ。中国とロシアが6者協議
という枠組みにこだわるのは当然だ。

 第三に、「CVID(注2)とCVIG(注3)の取引」そのものに内在する困難
を極める問題の存在。
 「できるだけ短い時間内に非核化プロセスを完了させる」点では合意したが、
C(完全)、V(検証可能)、I(不可逆)のいずれも簡単ではない。
 VとIは主として技術的範疇の問題だが、Cは優れて政治的だ。

 大きくいって二つの問題がある。
 一つは、完全な非核化というが、NPTで認められている平和利用の権利まで
朝鮮から取り上げることには、朝鮮は強く反発するだろう。
 今一つはミサイル開発を禁止するとしても、宇宙の平和利用の権利まで奪うこ
とには朝鮮はやはり抵抗するだろう。
 これらの問題を仮にクリアできるとした場合にも、「朝鮮半島非核化」と「朝
鮮の平和と安定」を同歩的に進めるロード・マップとタイム・テーブルに朝米及
び他の4ヵ国(韓中露日)が短時間で合意に達しうるかという問題が残る。ここ
でも、第一にあげたトランプの短気かつ気まぐれがいつ何時激発しても不思議は
ない。
 以上を要するに、朝米首脳会談の歴史的意義はきわめて大きい、しかし、朝鮮
半島非核化への道のりはそれにも増して険しいものがある、ということになるだ
ろう。 (ML[minayoko:2577]より、浅井基文氏の了承を得て転載)

 注1:THAAD-終末高高度防衛弾道弾迎撃ミサイル
 注2:CVID-[Complete,Verifiable,and Irreversible Dismantlement]
    「完全かつ検証可能で不可逆的な(核)解体」
注3:CVIG-「完全かつ検証可能で不可逆的な安全保証」


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┗■2.大飯原発控訴審…安倍政権忖度判決! 2018.7.4高裁金沢支部
 |  人格権を高らかにうたった福井地裁樋口判決に比べ
 | 余りにも貧相な内容の判決
 └──── 「さいなら原発・びわこネットワーク」

◎ 金沢まで滋賀から10数人参加…大津駅前から敦賀までマイカーで2時間、そ
こから金沢まで貸し切りバスで2時間半、台風に向かって行ってきました。
 若狭の原発を考える会のアメーバデモの初日の位置づけでもありました。バス
の中は交流と学習の時間、「2011年からの闘いで19原発の廃炉を勝ち取ってきた。
決して私たちは負けてはいない。新増設を阻止できれば、2053年までに日本の原
発はゼロにできる」(木原壯林さん)など、安倍政権ごときに負けないぞ!

◎ 人格権を高らかにうたった2014年5月の大飯原発福井地裁樋口判決を維持で
きるか否か、7月4日、午後3時過ぎ、名古屋高裁金沢支部前に固唾をのんで待
ち構える市民とマスコミ陣、そこに2人が裁判所内から小走りで現れ、“旗出し
”が行われる。
 若手弁護士の持つ「不当判決」、原告の東山義隆さんがもつ「司法は福島から
目をそむけるのか」の垂れ幕に、福井・北陸や関西一円から駆けつけた、たくさ
んの裁判闘争支援者からいっせいに怒りの声が上がる。

 福島第一原発事故後、原発の運転停止を求めた住民訴訟の初の控訴審判決とし
て注目されたが、内藤正之裁判長は「危険性は社会通念上無視しうる程度」とし
て、「周辺住民等の人格権を侵害する具体的危険性はない」とする、不当極まる
関西電力べったりの逆転判決だった。

◎ 裁判所門前でマスコミ記者から判決の第一印象を求められた東山さんは、
「福島第一原発の事故をなんと考えているのか。司法の役割をまったくはたして
いない」と。
 脱原発弁護団全国連絡会議共同代表・河合弘之弁護士は、「訴えても訴えても
聞く気がない、『馬の耳に念仏判決』だ。原発の危険性は認めてしかしそれは新
たな立法府の責任だと言う『三権分立放棄判決』でもある。
 島崎邦彦・元規制委委員長代理の証言さえ無視する『安倍政権べったり判決、
忖度判決』だ。」と、なんとも怒りを抑えきれない。

◎ 続く記者会見場では、井戸謙一弁護士は、「あまりにもひどい政治的判断だ。
裁判所が追い詰められている印象を受けた。国会で問題となっている今の官僚の
ように。」と述べた。 判決要旨を読み上げる内藤裁判長は傍聴席からの怒りの
声にもはや注意する余裕も失い、「……ね」というような話し言葉で判決を下し、
読了するや一刻も早くと逃げ去っていった。

◎ 原告団・中島哲演代表は、「福島・チェルノブイリの実態をきちんと学んで
いた樋口判決と比して、後退しすぎている。司法の使命感を放棄したものだ。
 福井地裁判決は、『豊かな国土とそこに国民が根を下ろして生活していること
が国富であり、これを取り戻すことができなくなることが国富の喪失である』と
語り、現在もなお癒える事のない福島第一原発事故の被害に真摯に向き合う倫理
的な問いかけであり、人権を守る砦としての裁判所の責務に忠実に原発の安全性
を厳しく審査した。この豊かな内容を持つ樋口判決に比して、余りにも貧相な内
容の判決である。
 世論と運動を広げて『原発必要神話』を、今回の判決をひっくり返す運動を巻
き起こしたい」と決意を披歴した。

◎ この不当判決への原告団・中島代表と弁護団・島田広団長の共同抗議声明で
は、「原子力規制委員会の安全審査の結果さえ出れば、裁判所は、自ら主体的に
原発の安全性を審査することなく、住民側の立証手段を奪ってでも強引に審理を
打ち切ってこれに追随するだけだった」として、「これは、もはや裁判ではあり
ません」、「関西電力のサーヴァント(召使い)」だとして、「満腔の怒りをも
って、強く抗議します。」とし、「私たちは、関西電力と国及び福井県に対し、
同原発が抱える根本的な危険性から眼をそむけることなく、直ちに同原発の運転
を停止するよう、強く求める」と結んでいる。
 河合弁護士は、「私たちは絶対に勝つ。なぜなら沖縄のように勝つまでやめな
いからだ」と訴えた。
  (「さいなら原発・びわこネットワークニュース」
   第27号2018年7月5日より)


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by kuroki_kazuya | 2018-07-07 06:15 | 核 原子力 | Comments(0)