スキーにはまっています。


by 幸田 晋

「資産家年金生活者をカモるカジノ法 元経産省クレジット信用取引課長が警告」

古賀茂明

「資産家年金生活者をカモるカジノ法 

元経産省クレジット信用取引課長が警告」


〈dot.〉


7/9(月) 7:00配信より一部

AERA dot.

https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20180708-00000012-sasahi-pol


 カジノ法案の審議が参議院で始まった。このまま行けば、今国会中の成立は確実だ。

 そもそも、カジノがなぜ、日本に必要なのか。

 安倍晋三総理は、カジノで海外からの富裕層を日本に呼び込むという。しかし、自治体の試算などでは、客の7~8割を日本人と見込んでいて、政府の説明とは矛盾している。しかも、この法案によれば、粗利の7割はそれを運営することになるであろう海外のカジノ企業に持って行かれてしまう。
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 カジノなどなくても、海外からの訪日観光客は急増中だ。彼らは、日本のパチンコや競馬目当てに来るわけではない。伝統文化、自然、温泉、日本食、アニメなどの文化、田舎の人情などなど、日本の魅力が海外の人々に理解され、多くの人を惹きつけているが、彼らが憧れる「日本的なもの」と「カジノ」は対極にある。

 逆に言えば、カジノが好きな人に日本に来て欲しいと思う日本人はいるのだろうか。観光客の数だけ、あるいは、消費金額を増やすことだけを目的にした政策に意味があるのか、ちょっと考えればわかりそうなものだが、トランプ大統領への貢物としてどうしても成立させたい安倍総理、利権に目がくらんだ自民党と日本維新の会、さらには国民民主党など一部野党の議員たちが、何が何でも今国会中に法案を通そうとしている。もちろん、関係省庁の官僚たちも、21世紀最大の「利権創造」だとはしゃいでいるようだ。

 さらに、残念なのは、自らの知恵のなさが原因でカジノしか思いつかない首長も誘致合戦を繰り広げている。大体その顔触れを見ると、品がなく、自分たちの伝統文化や町の魅力に誇りを持てない人々だと言っていいだろう。このような首長は、「知恵なし、品なし、誇りなし」の三無首長と呼ぶにふさわしい。

■笑える「世界最高水準の規制」

 ギャンブル依存症対策法が6日に成立したが、そんなもので、依存症が防げると思ったら大間違いだ。安倍総理は、世界最高水準の規制を導入するので、心配ないと言うが、この「世界最高水準」という言葉が出てきたときは要注意だ。原発再稼働のために無理矢理再稼働最優先で作った原発の規制基準を当初、安倍総理は、「世界最高」の規制だと言っていたが、欧米の基準の方が日本より厳しいことがバレると、今度は、「世界最高水準」と言い換えた。「世界最高」に「水準」を付け加えて、幅を持たせ、嘘を隠そうとしたのである。

 今回は、やや正直に、最初から「世界最高」ではなく、「世界最高水準」と言っている。それもそのはず。世間が最も注目していた入場規制が緩められ、とても世界最高とは言えなくなったのだ。

 最もわかりやすいのが、日本人などの入場料だ。日本がお手本にしているシンガポールでは8000円なので、当初は、公明党が「少なくとも」8000円と主張していた。しかし、自民党はこれを4分の1値切って6000円で合意した。この時点で、「世界最高」のキャッチフレーズは諦めざるを得なくなってしまった。
他の規制についても、例えば、入場回数の制限は、週3回、28日間で10回という制限を設けて、入り浸りを防ぐなどと言っているが、全く議論されていなかった「カジノで金貸し」を認めるという禁じ手が法案段階で入り、カジノ反対論者を驚かせた。

 法案によると、カジノ施設内では、現金自動受払機(ATM)の設置や貸金業者による営業が禁止されるが、外国人と一定の預託金をカジノ事業者に預けた日本人に対し、カジノ側が賭け金を貸せるというのだ。

 これについても、貸金業ではなく無利子融資で、期限も2カ月だからむやみに借金することはないとか、事前に「かなりの額」の預託金を預けた富裕層にしか貸さないので、金に困った人がのめり込んで生活に困窮するようなことはないなどと反論している。

 理屈を言えばいろいろ言えるものだが、後述するとおり、この規制では大変なことが起きる。それを想像できないような政府では、とてもまともなカジノ規制はできないと考えた方が良い。

■資産家年金生活者を陥れる罠はこれだ

 そもそも、カジノ業者が貧乏人を食い物にするというイメージ設定が間違っている。カジノ業者にとっては、カジノで大金を使わせるのが最大のテーマだ。ターゲットは、貧乏人ではなく、カネがあって、時間を持て余す依存症予備軍なのだ。日本人で「カネがあって時間もある」層と言えば、そう、家持ち貯金持ちの年金生活者だ。

 私は、経産省の官僚時代に3年ほどクレジットカードなどを所管する取引信用課長というポストを経験した。そこでは、個人信用情報機関も所管していたし、いわゆる多重債務者問題にも深くかかわった経験がある。アメリカの消費者金融の実態や規制の状況も現地で詳しく調べたりした。そこでわかったのは、貸金業者は、規制にうまく合わせながら、合法的に消費者の金を吸い上げるということだ。

 そこで、私の経験を踏まえ、カジノ事業の特殊性も勘案したうえで、カジノ業者が今回の法案を前提にして、資産家年金生活者の金を最も効率的に吸い上げようとするのかを考えてみた。

 カジノ事業者は、顧客の行動をカメラやチップのかけ方の記録などで詳細に把握できる。この客はたくさん使う客だ―すなわち依存症予備軍だ―と狙いを定めたら、カジノ業者が繰り出す最初の一手が、預託金勧誘だ。

 そのカギとなるのが、マイナンバーだ。カジノ法案では、マイナンバーでの入場チェックが義務付けられる。逆に言えば、カジノ業者は何もしなくても全ての顧客のマイナンバーを入手できる。また、カジノ事業者は、法律で、貸金業者や銀行などが運営するメンバー外には利用できないはずの個人信用情報機関へのアクセスが認められる。法案では、顧客の個人信用情報をチェックして貸すように義務付けられてもいるのだ。彼らは、顧客が申し込む時点で、必ず、自宅が持ち家かどうかを確認する。そこで、持ち家だとわかれば、すぐにその時価評価がいくらか調べるだろう。そのうえで、信用情報機関で顧客の情報を調べて、どれくらいまで貸せるかその上限を設定する。

 ところが、この問題で一番重要な預託金の額やその何倍まで貸していいのかという上限倍率規制の内容が法律には書かれていない。ある程度の富裕層に限定するという政府の言葉を文字通り受け止めれば、例えば、預託金の額は最低500万円などという額になるかもしれない。カジノのために500万円預けられるのは相当な富裕層に限られるから安全だと政府は言うだろう。しかし、それは嘘だ。

 カジノ業者は、預託金を預ける顧客にVIPカードを渡して、無料宿泊や無料食事クーポンなどの数々の特典を用意する。預託金は使う義務はないのだから、とりあえず預ければ、特典が利用できてお得ですよという誘い文句につられて、「使わなければいいんだから」ということで預ける人はかなり出て来るはずだ。そのうえで、貸付倍率の上限は、2倍なのか、10倍なのか、それ以上なのか、それが法案には書いていない。一つの目安となるのが、FX取引の証拠金規制だ。これによれば、現在預託する証拠金の25倍まで為替取引できることになっている。500万円の25倍だと1億2500万円だが、それは少し大きすぎる響きがある。これを仮に10倍だとすれば、5000万円が貸付上限だということになる。

 もちろん、貸しても取りはぐれれば何の意味もない。そこで、狙うのは家持ち層だ。仮に顧客が時価5000万円の家を持ち、貯金が3000万円あるとなれば、5000万円貸しても十分に回収できる。こうした層に預託金を預けさせればまずは大成功だ。

・・・(後略)
by kuroki_kazuya | 2018-07-10 06:35 | 学ぶ