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by 幸田 晋

平成最後の終戦の日に「開戦神話」の「嘘」を読んだ

平成最後の終戦の日に

「開戦神話」の「嘘」を読んだ


田中良紹 | ジャーナリスト

8/15(水) 23:48 (有料記事) より一部

https://news.yahoo.co.jp/byline/tanakayoshitsugu/20180815-00093266/

フーテン老人世直し録(387)

葉月某日

 平成最後の終戦の日に牧野邦昭著『経済学者たちの日米開戦』(新潮選書)を読んだ。戦前の日本はなぜ敗れることが分かっている英米との戦争に踏み切ったのか。それを経済学者の目で探った労作である。

 サブタイトルに「秋丸機関『幻の報告書』の謎を解く」とあり、昭和14年に陸軍省に設置された戦争経済研究班(秋丸機関)が作成した英、米、独と日本との経済力を調査分析した報告書を発掘し、これまで語られてきた「通説」を覆している。

 戦後の日本人が教えられてきた「通説」は、国際情勢に精通する海軍の主張を好戦的な陸軍が押さえ、天皇の絶対的権力を背景に精神主義を前面に打ち出し、国民を非合理な判断に導いたというものである。

 従って「悪」は軍部、とりわけ陸軍とされ、海軍の山本五十六には一定の評価を与えて戦争映画のヒーローになるが、戦前の軍部は全体として国民を騙し国家を破滅させた張本人であり、国民は被害者で軍部が加害者という図式を教えられてきた。

 そのため日本国憲法が「戦力不保持」と「交戦権の否定」を9条に2項に定めたことは広く国民の支持を得るところとなり、フーテンも長くその考えに影響されてきたが、しかし同じ敗戦国の西ドイツが朝鮮戦争の勃発で米国から再軍備を求められると軍隊を作り、しかも徴兵制を敷いたことをどう考えたら良いのか疑問に思ってきた。

 さらに冷戦が終わる1989年頃からフーテンは米国議会中継専門テレビ局C-SPANの配給権を得て米国議会を見るようになり、軍人がしばしば公聴会に呼ばれて証言する様を見るうち軍人に対するイメージを変えた。

 当然のことながら戦争で真っ先に生命を失うのは軍人だから軍人は戦争と真剣に向き合う。そして民主主義国の軍人は議会が予算を承認しなければ何もできない。議会に絶対服従なのである。従って軍人は戦争に慎重でありいたずらに好戦的にはならない。好戦的なのはむしろ政治家や国民の方であった。

 そこからあの愚かな戦争に日本を導いたのは軍部で国民は被害者なのかという疑問がくすぶるようになった。その意味で本書はフーテンの疑問に一つの答えを提供してくれている。そしてもう一つ「秋丸機関」に招かれた経済学者の中心にマルクス主義者として治安維持法違反で検挙され保釈中だった東大助教授有沢広巳氏がいたことにフーテンは強い印象を受けた。

 陸軍は共産主義者であるかどうかよりその学識を重視していた。そして有沢氏の他にも近代経済学者の中山伊知郎氏など錚々たるメンバーが参加して、昭和15年から16年にかけ大戦中の主要国の経済力、すなわち戦力を分析して戦争の先行きを予想した。

 秋丸機関を組織した秋丸次郎主計中佐は満州国で経済建設に従事していた軍人である。満州国を作った石原莞爾はソ連の計画経済を真似て重化学工業化の「五か年計画」を策定、日本の国力を充実させるまで戦争すべきでないと主張して日中戦争に反対し東条英機に左遷された。秋丸中佐はその石原らと共に満州国建設を行っていたのである。

 「秋丸機関」の研究は以下の結論に達する。米国と日本の経済力には10倍以上の開きがあり、戦争しても全く勝ち目はない。しかし英国はそれほどでない。ただ英国を米国が支援すれば英国の力も侮れない。米国から英国への輸送船が大西洋でドイツの攻撃を受け輸送路が遮断されれば日本が英国に勝てる可能性はある。

 ドイツの経済力は万全でなく、ソ連を短期間で打ち負かし、そこから食糧やエネルギーを得られなければ英国との戦いに勝てない。独ソ戦に日本は参戦すべきか。国土の広いソ連と戦争するより、石油資源を求めて南進し資源を得たのちソ連に向かう方が得策である。

 英米と戦わなければ資源のない日本は対日包囲網によって「じり貧」になり戦わずして敗北する。米国と戦えば高い確率で負ける。しかし低い確率だがドイツが短期でソ連に勝てば米国の準備が整わないうちに英国に勝って南方の資源を手に入れ有利な講和に持ち込むことが出来る。

・・・(後略)
by kuroki_kazuya | 2018-08-16 06:45 | 軍事 | Comments(0)