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by 幸田 晋

訳も分からずに「自己責任」を叫ぶ愚民国家

訳も分からずに「自己責任」を叫ぶ

愚民国家


田中良紹 | ジャーナリスト

10/29(月) 1:59より一部

https://news.yahoo.co.jp/byline/tanakayoshitsugu/20181029-00102190/

 フリージャーナリストの安田純平氏がシリアの武装勢力から解放されたとの情報は、サウジアラビアの反体制ジャーナリストがトルコのサウジ総領事館で殺害された疑惑に世界が注目していた10月23日、菅官房長官によって突然深夜に発表された。

 その日は、トルコのエルドアン大統領が国会で演説を行い、ジャマル・カショギ氏の死亡を「残忍な計画的殺害」と断定し、「口論から死亡した」とするサウジアラビア政府の発表を全否定、また殺害指示を疑われるムハンマド皇太子主催の「砂漠のダボス会議」がリヤドで開かれた日である。

 菅官房長官によれば、その日の夜にカタール政府から安田氏の解放情報がもたらされ、安田氏はトルコにある入管施設に保護されているとのことであった。カタールとトルコが連携して安田氏を救出したというのが最初に受けた印象である。

 トルコはカショギ氏殺害事件を中東でのパワーゲームに利用し、情報を小出しにしながらサウジを追い詰め、しかしとことんまでは追い詰めずに貸しを作り、米国との関係をも有利にしようとしている。そのトルコがこの時期にサウジと敵対関係にあるカタールと組んで安田氏を解放させたとしたら、どのような意味があるのかと思わせた。

 タイミングがタイミングだけに、安田氏解放とカショギ氏殺害事件に関連がないかをまず私は考えた。無論、これまでのところそれに関する情報は何もない。しかし3年以上も前からシリアの反体制武装勢力に拘束された安田氏が、このタイミングで解放された理由を考えてみなければならない。

 言われているのは、シリアの武装勢力が劣勢に陥ったから解放したという説やカタールが身代金を支払ったという情報がある。しかしそれらは疑問に対する十分な解答にはならない。また官邸を司令塔とした「国際テロ情報収集ユニット」がトルコとカタールに働きかけ解放されたという話も流されているが、これも鵜呑みにはできない。

 2015年1月にイスラム国に殺害された湯川遥菜氏と後藤健二氏の時を思い起こせば、安倍政権は一貫して日本人の救出に冷淡だったからだ。民間軍事会社を経営し中東に武器の売込みに行ったとみられる湯川氏を、外務省の警告を聞かずに危険地帯に入った迷惑な人物として扱い、誰も助けに行かないので救出に向かった後藤氏も同様に見られた。

 とにかく政府の言うことを聞かずに外国に行ってテロ組織に拘束された人間は「自己責任」だから救出しないというのが日本政府の考えである。これは先進諸国の政府にはない対応だと思う。本人がどんなバカげた人間だろうが、政府を批判する人間だろうが、外国人に殺されそうになった自国民を救出するのは主権国家の務めだからである。

 そのためには何でもする。表には見せないが裏では汚いこともやる。それが国家というものだ。そして身代金を支払わないと表では言いながら、水面下では他の手も含め何でもやるのが政治家の仕事である。

 とにかく自国民を救出しなければ国民は納得しない。税金で養っている政治家や官僚に対して国民は怒る。ところが日本はその逆だ。税金で養っている政治家や官僚の言うままになって、お上の言うことを聞かない国民に怒りをぶつける。

 私はこの時期に安田氏が解放されたのはなぜかを考えていたが、世間ではそんなことより安田氏の「自己責任」を巡ってバッシングが始まったようだ。外国人には異様な光景に見えるのではないか。

 思い起こせば、2004年の「イラク日本人人質事件」が「自己責任」で被害者が猛烈なバッシングを受けた最初だった。米国のブッシュ政権はイラクが大量破壊兵器を持っているという「嘘」を流して先制攻撃に踏み切り、小泉政権は自衛隊のイラク派遣を決めた。

 これに対しイラクの武装グループは、日本人3人を拘束し自衛隊の撤退を要求する。小泉総理は自衛隊撤退を拒否する一方で、3人の救出には全力を上げるよう指示し、外務副大臣と警察官僚を現地に派遣した。

 イスラム教聖職者の仲介で3人は解放されたが、国内では「自己責任だ」とするバッシングが異様なほどに盛り上がり、米国のパウエル国務長官は「人質に責任があるとは言えない。このような人たちを日本の人々は誇りに思うべきだ」とバッシングを批判した。

 結局、イラク戦争は「自己責任」を根拠に被害者をバッシングする習慣を日本人に植え付けた。そのため「嘘」から始まったイラク戦争の責任追及はしないままに終わる。イラクに軍隊を派遣した国はどこでも政治指導者が責任を追及され、特に英国ではブレア首相が任期途中で退陣させられた。

 米国でもブッシュ(子)大統領はメディアから厳しい批判を受け、米国議会は「大量破壊兵器はない」と報告したCIA担当者の証人喚問を行って、イラク戦争の実像を国民に知らせようとした。

 しかし日本だけはイラク戦争に協力した小泉総理への追及がなく、そのため国民はイラク戦争の実像を記憶にとどめるより、テロ組織に拘束された被害者を「自己責任」でバッシングする快感を覚えたように私には思える。

・・・(後略)
by kuroki_kazuya | 2018-10-29 06:15 | 学ぶ | Comments(0)