スキーにはまっています。


by 幸田 晋

8年目の現実 福島原発震災の教訓と危機状況

8年目の現実 福島原発震災の教訓と
危機状況 (その2)
  
汚染水「長期保管」でトリチウムの減衰を待つ
    
デブリはいじらず石棺で長期密封すべき
      
原発再稼働が福島第一原発事故対応を阻害する
          
山崎久隆(たんぽぽ舎副代表)



たんぽぽ舎です。【TMM:No3613】
2019年3月29日(金)午後 06:55
地震と原発事故情報
より一部

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┗■1.8年目の現実 福島原発震災の教訓と危機状況 (その2)
 |  汚染水「長期保管」でトリチウムの減衰を待つ
 |  デブリはいじらず石棺で長期密封すべき
 |  原発再稼働が福島第一原発事故対応を阻害する
 └──── 山崎久隆(たんぽぽ舎副代表)

     ※(その1)は3/27発信の【TMM:No3611】に掲載

3.未解決の汚染水問題 「長期保管」でトリチウムの減衰を待つ

 汚染水問題は2つのカテゴリーがある。1つは敷地に流れ込む地下水と
降り注ぐ雨水が放射能に汚染されて環境中に流出していること。
 もう1つのカテゴリーが、原子炉を冷却するために水を循環させている
システムから出る汚染水で、トリチウムを大量に含んでいる「トリチウム
汚染水」だ。

 この2つのうち、主に議論になっているのは「トリチウム汚染水」。
 東電は敷地内のタンクを増設し続けており約112万トンを保管している。
 建屋には地下水と雨水と冷却用に投入している水が流入し、その一部は
環境中に流出、そして大部分は吸い上げられてアルプス(トリチウムを除
く放射性物質を低濃度まで除去する設備)を通して再度「冷却に使用」さ
れるラインと、タンクへ貯蔵されるラインに振り分けられる。このうちの
後者が「トリチウム汚染水」だ。

 原子力規制委員会は早期の海洋放出を求めているが福島県や地元の人々
から、海に流すなとの強い要求を受けている東電は結論を出さず、国の
汚染水処理対策委員会に下駄を預けている。
 その委員会が、地元と東京の3箇所で公聴会を開いた。意見表明をおこ
なった44人のうち海洋放出に賛成したのは2人。これを受けて汚染処理対
策委員会は早期放出案を一旦中止し、対策の選択肢の中に長期保管を加え
て検討することとしている。
 半減期の10倍の時間が経過すれば放射線量はほぼ1000分の1になるの
で、800兆Bqくらいと想定されている汚染水中のトリチウムは123年後
には8000億Bqほどになる。
 それを100万トンで割れば1リットル当たり800Bqで、今の東電の基準
1500Bq以下になる。こうした減衰を待つ方法が問題解決には有効だ。

4.デブリはいじらず石棺で長期密封すべき

 溶けた燃料がどうなったのか。2017から2018年にかけて少し見えて
きた。
 ロボットカメラで調査し、1、2、3号機で燃料の溶け落ちた様子など
格納容器内の状況が一定程度わかってきた。
 しかし、それらを三次元的に把握するには至っていない。
 デブリの場所は確認できても、それが張り付いているのか浮いているの
か、重さや固さは、持ち上げられるかもわからない。今は2019年度のどこ
かの時点でデブリのサンプリング調査をする段階だ。
 デブリの取り出し方法も不明確だ。

 むしろデブリを取り出すことを考える前に、100年程度は密封して管理
することだ。まず最初に10年くらいかけて水が出入りしないように地下に
「石棺」を造るべきだ。
 中途半端な状態でデブリをいじり出すのが一番危険だ。万が一にも臨界
になったり水蒸気爆発を起こしたりすれば手に負えない。建屋の破損箇所
から流出することも怖い。東電もそれはわかっているはずだ。

 密封して管理するしかないことを地元に納得してもらうほかない。
 今は「あらゆる手段を尽くして頑張っているのだ」という姿勢を見せ続
けることが目的化している。
 しかしそれは、巨額の資金を投入し続けることになる。それが税金であ
ることは忘れてはならない。

5.原発再稼働が福島第一原発事故対応を阻害する

 資金投入といえば、原発再稼働に日本中で巨額の資金が投じられている。
東電も柏崎刈羽原発に6800億円を投じた。
 東海第二原発にも1900億円をつぎ込む予定だ。福島第一原発に集中すれ
ば、もう少しまともな対策が進められる。
 再稼働ありきの国や電力会社の姿勢は、資金や人材を、再稼働出来ない
原発に投じながら「フクシマ」を無かったことにしようとしている。

 九州電力は川内原発と玄海原発を再稼働させた結果、管内の電力需要に
比して過大な発電設備になり、太陽光など再生可能エネルギーからの供給
を強制遮断した。本末転倒である。

 他にも弊害が出ている。北海道電力の全道停電も泊原発の再稼働を当て
にしているため本州との連系線を含む送電網や新規発電所の整備が遅れた
結果である。
 東海第二原発は、運転制限期間40年を超えており、本来は廃炉だが3000
億円もの費用を掛けて再稼働しようとしている。100万人いや、それ以上
の人々の生命と生活を危機にさらしながら。

 再稼働への「意気込み」を醸成したのは国の「原子力をベースロード
に」とのエネルギー基本計画だ。実態は現時点で再稼働している原発は
9基だけ。「2030年に20%」など達成できるはずもない。

 再稼働の旗振りが続く限り「国策」に寄生して原子力産業は巨額資金を
調達し続け、そのツケは国民に回る。もし事故が起きれば数十、数百倍へ
と膨れ上がるだけだ。
 この「悪夢のサイクル」を止めなければ、どんな政権が出現しても変わ
らない。
 再稼働阻止とは日本の仕組みそのものを問い直すことでもある。(了)

 (初出:月刊たんぽぽニュース2019年3月No279より転載)


※《たんぽぽ舎よりご案内》

 5/12(日)木幡ますみさんを激励する集い
     『福島第一原発事故から9年目 福島の現状
      町議として活動4年目で見えてきたこと』

 日 時:5月12日(日)13時より17時
 お 話:木幡ますみ (福島県大熊町町議会議員)
 会 場:「スペースたんぽぽ」(ダイナミックビル4F)
 主 催:たんぽぽ舎  協力:ウシトラ旅団
 参加費:800円   懇親会費は別途。


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┗■2.追悼 渕上太郎さん
 └──── 青柳行信 (★原発とめよう!九電本店前ひろば★村長)

3月31日(日)午後3時半頃~「渕上太郎追悼花見会」には
参加できませんが

◆飄々(ひょうひょう)として しなやかに
 凜(りん)として 今も ここに存在 渕上太郎さん

 渕上さんが★原発とめよう!九電本店前ひろば★に立ち寄られ、
東京に戻ったら、ご自分もテントをたてる と言われ
経産省正門前にテントをお仲間とたてられました。
まさに有限実行の人でした。


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┗■3.六ヶ所再処理事業所を直ちに不合格にせよ!
 |  諸般の事情で珍しく六ヶ所再処理施設の問題点を
 |  洗い出して、「合格」延期
 | 原子力規制委員会は原発再稼働推進委員会!その196
 └──── 木村雅英(再稼働阻止全国ネットワーク)

 3月20日(水)の原子力規制委員会定例会議がなかなか面白い。
http://www.nsr.go.jp/disclosure/committee/kisei/00000416.html
 議題4「日本原燃株式会社再処理事業所における再処理の事業の変更
許可申請に関する審査についての討議」で、昨年に審査が終わっていたは
ずなのに、各ページに「討議用資料(未定稿)」と斜めに大きく押印した
「審査書(案)」を資料に、いつものシャンシャン「合格」でなく、委員
長ほか委員や規制庁トップから異例の厳しい発言が続き、審査継続(差し
戻し)と決まった。

 原子力規制委員会が変身したのだろうか? いやそうではない。
 確かに更田委員長は、再処理施設は初めてのことであるとか、面的に広
く放射性物質が分布しているとか言い訳している。核燃料施設の「新規制
基準」の不合理も包含していよう。
 が、この会議に提出された「日本原燃株式会社再処理事業所における
再処理の事業の変更許可申請書に関する審査書」(案)の不出来さは、
日本原電の東海第二原発の適合性審査の審査書の不出来さと同様であろう
に、東海第二原発は強引に合格させ、六ヶ所再処理施設はすぐに合格させ
なかった。
 なぜなら、六ヶ所再処理工場が稼働すれば、プルトニウムが増えて米国
が歓迎しないし、東電福島第一原発からよりも高濃度のトリチウム汚染水
を流すことになるし、おまけに原発推進に経団連からも疑問符が出され、
田中俊一前委員長が核燃料サイクルについて異論を述べたなどなど、今は
早急に六ヶ所再処理施設の「合格」を与える時でないと原子力規制委員会
トップライトが判断したのだ。

 原子力規制委員会は、東海第二原発の適合性審査合格・運転延長認可と
地元住民説明会などと、全国の再稼働反対運動と全国の裁判で、「国民」
の信頼を失ってきている。続けて今、六ヶ所再処理施設合格を出して評価
を下げたくないと判断したのだ。

 とりあえず「合格」延期と判断したら、規制委トップ達は競争してまと
もに不合格の理由を述べ立てた。まるで私たちが院内ヒアリング集会で規
制庁担当に指摘してきたように。以下に異例の「討議」なる猿芝居の一部
を紹介する。

○更田委員長:ですので、航空機落下、航空機落下に伴う火災、臨界
事故、蒸発乾固、水素爆発、そして重大事故等に係る各種の設定、使用済
燃料の冷却期間、火災防護もそうだけれども、全般にわたって判断根拠に
関しての記載の充実は必要であろうと思います。
○伴委員:「震源を特定せず策定する地震動に関する検討チーム」が今
走っていて、その議論が収束に向かっていて、このタイミングでバック
フィットということになると、正直、二度手間になってしまう。
○山中委員:申請者が巨大噴火の発生を予見できると誤解を与えるような
記述が見られる。実際は、ガラス固化体の搬出などが実現可能な対処法と
も思えない。
○安井原子力規制庁長官:ある重大事故が起こって、それが二次的連鎖を
起こさないかとか、防止機能の更なる劣化を起こさないかというために
は、もっとしっかりとした評価がなされているはず。
 もう一つが意外と難しいけれども、この施設は基本的に高い放射性
物質を内包したものがあちこちにある。どこで何が起こっているかが分か
らなくて対処できるのだろうかという議論が少し、正直言うと抜けている
のではないか。
○桜田原子力規制技監:耐震問題が気になっている。現時点においては
Ssを決めているのは「出戸西方断層」でそこの断層の長さが11kmと
なっているけれども、この地域の断層とかについていろいろな公開の
文献なども出ているので、そこは精査してそれを踏まえてどう考えるか。
 八甲田火山は、40万年前に最後の巨大噴火があったと、10万年前以降は
平穏になっているのでその後を考慮して決めたと書いてあるけれども、
40万年から10万年までの間はどうしたのかというところは必ずしも見えて
いない。

 近隣施設の問題など、多くは私たちが東海第二原発の審査でも何度も
指摘したことである。原子力規制庁担当も、今迄の大アマ審査をやめて
厳しく審査して「不合格」とするべきだ。
 日本原燃も、昨年9月に審査を終えた筈なのに、これだけ多くの指摘を
されて対策が大変であろう、無理せず「不合格」を受け入れるべきだ。

 なお、NHKの報道「使用済み核燃料の再処理工場 審査合格の時期の
見通し不透明に」もご参考に。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20190320/k10011854811000.html


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by kuroki_kazuya | 2019-03-30 06:15 | 核 原子力